■「クリアできなかった」思い出もあるはず
ただそんなポップさの反面、難易度が高めに設定されているのも本作の特徴です。このゲームは中盤以降、死ぬほど難しくなっていくのですが、ワープや面セレクトといった裏技的要素がひとつもないんです。コンティニューは無制限でできるというお情けはありますが、当時のチビっ子には歯応えがありすぎ「クリアはできなかった」という方も多いのではないでしょうか。実際、今、大人がやっても難しく、某ゲーム番組ではメインキャストがギブアップをし、スタッフが20時間以上かけてクリアしたほどでした。
当時僕は小学校低学年でありながら一人暮らしをしていたので、ファミコンの電源を切らずにテレビだけ消して学校に行き、帰ってきてから『高橋名人』の続きをやる、というその繰り返しで、48時間以上かけてクリアしました。それほど難易度が高い。2014年にゲーム番組でクリアするまで寝れないという企画をやった際も、それでも10時間以上かかってしまったんです。当の高橋名人本人も、そのぐらいの時間をかけてようやくクリアしたとおっしゃってました。
『高橋名人の冒険島』は定価4900円と、子どもたちにとっては非常に高価です。あまりに簡単にクリアできるようなゲームは即「クソゲー」扱いされていた時代ですから、逆にこれぐらいの高難易度が正解だったんでしょう。ファミコンブームの80年代の子どもたちのゲームに対する情熱ややり込み具合は半端なかったので、「子どもたちならこれぐらいはクリアするだろう」というメーカーの挑戦心から、家庭用ゲームへの移植でも難易度はそのままに、鬼のように難しくなってしまったと言われています。