■今も愛される『神トラ』の魅力
まずは簡単なあらすじ。物語の舞台となるハイラル王国。このハイラルの聖地と呼ばれる場所には万能の力を持つ”トライフォース”が古来より眠っているとされていました。しかしあるとき、聖地への入り口から悪しき力が湧き出てきたことを受けて、7人の賢者がその入り口を封印しました。この出来事は後に「封印戦争」として語り継がれることとなります。
それから長い長い年月がたったある嵐の夜、主人公・リンクは夢の中で助けを求める声を聞きます。
その声の主は「ゼルダ」と名乗り、お城の地下牢に捕らえられていることを伝えてくれます。ゼルダが言うには、城にやってきた司祭・アグニムが7賢者の封印を解くため、かつての七賢者の末裔にあたる娘たちをイケニエに捧げているそうで、ゼルダ以外の6人はすでにイケニエとなってしまったというのです。
助けを呼ぶ声を聞いたリンクが目を覚ますと、一緒に住んでいたおじさんが剣と盾を持ち、「朝までには戻ってくる。家を出るんじゃないぞ」と家を出ていきました。
しかし、待てど暮らせど帰ってきません。異様な雰囲気を感じ取ったリンクがお城に向かうと、そこには瀕死のおじさんがいました。そして、おじさんから剣と盾を託されたリンクは、その足で捕らえられたゼルダ姫を助けに行くのでした。
これが物語の始まりです。
ゼルダシリーズ特有の「これから何が待っているんだ!?」というワクワク感と何者でもなかった少年が成長していく感じはこの頃から健在です。「ゼルダと言えばコレ!」という楽しさがギュっと詰まっている冒頭ですね。
そして、みなさんゼルダと言えば「緊張と緩和」。
なんだか物々しい雰囲気、不気味なBGMなど小さいころにプレイしていたら「怖い」と感じてしまいそうな世界観の中にキラリと光るユーモアがそこかしこにあります。
たとえば、シリーズおなじみのカカリコ村にいるニワトリ(コッコ)を殴ると大勢のニワトリたちに返り討ちにあったり、「幸せの泉」にルピー(お金)を投げると運勢を占ってくれたりなど、遊び心は数えきれないほどあります。
本作が初登場で後にゼルダの代名詞にもなったアイテム・フックショットを入手したときの「ボヨヨ~ン」もなかなかユルくて好きです。
そんなところもゼルダの魅力ですが、本作を「シリーズ最高傑作」に推す声が多いのはやはり、2Dゼルダのゲームシステムがほとんど完成しきっている点だと思います。
本作はシリーズ3作目で、初代作『ゼルダの伝説』から大きくパワーアップしています。2作目『リンクの冒険』はサイドビューであったり、経験値とレベルの概念があったりと初代とは違ったシステムへと進化しているのですが、3作目の『神トラ』は初代作のシステムへと原点回帰しました。そこで続編に求められる「初代作との違い」をどう表現するかによってシリーズの評価は大きく変わるのですが、『神トラ』はその表現が群を抜いて素晴らしかったのです。