声優・徳井青空“逆張り考察オタク”の視点から見た「TENET」【そらまるコラム・第11回】の画像
声優の徳井青空さん (写真は著者提供)

 こんにちは、声優の徳井青空です。あっという間に涼しくなり、エンドレスエイトで夏休みを繰り返していたどこぞの集団もきっと衣替えをしているはずだ。あそこの高校は夏季半袖制服はもちろん冬季長袖制服も大変よろしい。個人的にカーディガン萌えなのでざっくり羽織ってキチッと座ってちらっと太ももがのぞくその様式美は、先100年消失してほしくないもののひとつだ。

 宇宙人も未来人も超能力者もいたら良いなと心では思っていた10代。今ではすっかり大人になり「宇宙人も未来人も超能力者もいないわけがないだろ!」と堂々と人前で言えるぐらいには、かつての自分の理想の世界にいるんじゃないかなと思う。子どもの頃、学生の頃、そのときなんとなく心ひかれたもの。どうして当時夢中になっていたのか。どうして気になっていたのか。大人になればなるほど、そのわけが分かってくる気がする。そして160cm☆☆kgまで大きくなった私、今も似たようなものに心ひかれるたびに「変化しない自分」がここにいる妙な安心感が生まれて「おれ、変わってねー!w」と一人でクスッと笑ってしまう。

■「やっぱノーランしか勝たん!」

 そんな相変わらずSFやオカルトを追い続ける中、珍しく映画館に実写作品を観に行った。(最後に映画館で見たのは『ドラえもん』。3度目となる恐竜モチーフの作品『のび太の新恐竜』で、釘宮理恵さん&遠藤綾さん演じる双子の恐竜の鳴き声がかわいすぎるのでそれだけでも見る価値がありすぎる)

 そう、話題の『TENET』だ。クリストファー・ノーラン監督・脚本・製作によるSF映画で、世間ではとにかく内容が難しいと言われている作品だ。以前の作品『インセプション』にも感銘を受けたSFオカルトひねくれ考察エヴァンゲリオンオタクの私としては何がなんでも理解してまた感銘を受け、「やっぱノーランしか勝たん……」と秋の空高くに向けて漏らしたい。いや、必ず漏らしてみせる!! 2時間半とかなりのボリューミーな作品のため、途中で眠気がこないようたっぷり12時間以上の睡眠を取ってから私は劇場に向かった。

 そして、とにかく集中しながら鑑賞した結果。

「これは面白い!!やっぱノーランしか勝たん!!!!」

 無事漏らせたところでネタバレのないようこの魅力を布教したい……!

『TENET』の物語は“時間を逆行する装置”が存在する世界で、主人公が戦争を止めるミッションに巻き込まれ参加していくというものだ。ストーリー自体は難解なものではない。いったい何がそんなに難しいと言われているのか? 気になって調べてみた。が!

「TENET見た! 分からなかった」
「TENET面白かった! でも分からなかったー」
「もう一回見たい! 分からなかった!」

 と、とにかく「分からない」としか出てこないのだ。どこまで分かってどこがどう分からなかったのか謎が深まりつつ、これもしかして私が理解した内容も全然違うのか? と強い不安に襲われる。さらに評価として「これは物理学を理解していないと理解できない作品」とされている。

 だが、私個人の感想では「おおむね物理学に反していない」だけであって物理学そのものを理解していないと内容が分からないというわけではないと感じた。作品のテーマはおそらく物理ではない。その証拠に、「2回目見たらTENET分かった!」「1回目分からなくて、2回目気づけて、3回目で完全に把握できた!」というような感想もでてくる。2時間半×3回の視聴で物理学が十分に理解できるのであれば今度から物理の授業ではTENETを流せば良いはずだ。

 そもそも「TENET」というワード。前から読んでも「TENET」後ろから読んでも「TENET」の回文になっている。ほか4つの単語と組み合わせ、「SATOR」「AREPO」「TENET」「OPERA」「ROTAS」それぞれ1行ずつ順に書いていくと、5文字の5単語、ちょうど正方形に収まるような形になる。それは四隅のどこから読んでも回文になる仕掛けになっている。しかも「TENET」以外の4つの単語も作中に登場する。これは今月の『月刊ムー』にも詳しく書いてあったので劇場で見たときに「あ! これ今月のムーでやったところだ!」と勉強も部活も上手くいきそうなアハ体験があった。

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