■アルフレドの「完全無欠ぶり」
アルフレドは言ってしまえばロミオと同じ、単なる煙突掃除夫仲間の1人。だが、アルフレドは困っている掃除夫を積極的に助け、よそものに嫌がらせをしてくる不良グループ「オオカミ団」に立ち向かうため、煙突掃除夫たちの互助同盟「黒い兄弟」を結成するなど、非凡なリーダーシップを発揮する。
知恵や発想力に優れ、誰よりも勇敢で、どう考えても一番すごいのはアルフレドなのに、本人は「ロミオに勇気をもらったからだよ」などといつも謙遜する……というか本気でそう思っている様子。そんな控えめなところも、アルフレドのカッコよさを引き立てていたと思う。
気づけば教会で読書をしている知的で教養のあるアルフレドは、貧困から煙突掃除夫になった子どもたちとは、そもそも境遇が異なる。のちにアルフレドは貴族の子爵家の御曹司であり、叔父の策謀により放火殺人犯の汚名を着せられたというバックボーンが判明するのだ。
明らかにほかの掃除夫とは違って、どことなく高貴な雰囲気が漂っているアルフレドだったので、この事実が分かったときは「そうだよなぁ」と納得したもの。だが、そんなアルフレドは、仲間の前で貴族らしい態度は一切見せない。それどころかアルフレドは、国王の前で「煙突掃除夫であることを恥じたことはありません」「僕は煙突掃除夫になってから本当の友だちと呼べる仲間と出会いました」とまで言い切るのである。