■エピソードの端々に見える「現実感」と「人情」

 そのストーリー展開は、宇宙をテーマにした作品のわりにいろんな意味で「現実的」。トッピーたちのいた会社「宇宙便利舎」は倒産し、退職金代わりに受け取ったのがサジタリウス号。オンボロ宇宙船を譲り受けたリーダー的存在のトッピーが一念発起して起業するというエピソードは、「宇宙のロマン」というより庶民的にすら感じる。

 また、宇宙を航行中に愛娘が誕生したことを知ったトッピーに、ラナが「これが苦労の始まりなんやけど、とにかくおめでとう」と、妙に実感のこもったアドバイスを贈るシーンがある。そんななにげないセリフの節々から、子ども向けアニメとは思えない“リアリティ”が感じられた。

 とはいえ、こうしたキャラクターたちの「人間臭さ」こそが『サジタリウス』の味かもしれない。7人も子どもがいる大家族の大黒柱・ラナは、中でも一番現実的な思考をするキャラクターだ。会社がつぶれたときは、家族のために一度は安定を選んで、トッピーが設立する新会社への誘いを断った。

 トッピーの会社に入ってからもラナは、青臭い正義感や理想(これはトッピーの良い部分でもある)をふりかざすトッピーとたびたび衝突。さらに死にそうな目にあって、トッピーの会社を辞めて転職したりもする。しかし転職に成功して安定収入が得られるようになっても、トッピーが遭難したことを知ると非情になれず苦悩してしまうのがラナの人間的な魅力だ。

 また、ラナは作中でしきりに「ラザニア食べたい!」と叫ぶが、これはラナの妻の得意料理。ふだんは肝っ玉母さんの尻に敷かれているラナだが、妻への愛情がかいま見えるシーンでもある。余談だが自分は、この作品で初めて「ラザニア」という食べ物を知り、「作ってくれ」とねだって母親を困らせたことを思い出す。

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