もう2020年が下半期に突入したという衝撃の事実! こんにちは、声優の徳井青空です。
4月から放送スタートした作品も1クールの放送を終え、7月からはまた新たに夏アニメの放送が始まる。3か月ごとに新作アニメが楽しめるという楽園のような環境が当たり前になっていたが、改めてそれがいかに恵まれた日常であったかを痛感した。
私が出演した春アニメ『プリンセスコネクト!Re:Dive』『継つぐもも』は、どちらもかなり前に収録が済んでおり、放送は予定どおり行われた。どちらも1クールの作品だ。ところが日曜の朝のアニメ『キラッとプリ☆チャン』は、4月から新シリーズのオンエアが始まったものの、5月には以前のシリーズからセレクト放送というかたちでオンエアされた。現在は新シリーズの通常放送になっているが、他にも同じように新作のオンエアが止まってしまったアニメがいくつかあったのだった。
新作のオンエアが始まった理由としては、やはりアフレコの再開が大きいだろう。ただ、再開したアフレコの状況はこれまでとは違う形になったところが多いのではないだろうか?
これまでは毎週決まった時間に出演者全員が集まり、1話分のアフレコをするというのが基本だった。アフレコというと収録物なので何度もやり直せるイメージがあるかもしれないが、やはり役者がいっせいにお芝居をするという意味では“生モノ”であると思うし、スタジオ内は舞台のようなライブ感がある。テスト、本番、リテイクと段取りはあるが、もちろん皆本番一発勝負の気持ちで取り組むのでアフレコ本番の緊張感はもの凄い。何度やってもドキドキするしワクワクする瞬間だ。
台本を事前に読んで、自分のセリフをどんなお芝居にしようかそれぞれが練ってきてそれをアフレコのテストで初めてぶつけ合う。いくら考えてきた演技プランがあったとしても、みんなで1つの作品を作る上では柔軟に自分のお芝居も変えていく必要がある。アカペラで歌うセッションのように、ほかの人の影響を受けながら、自分も影響を与えながら。
先輩の声優さんがお芝居を引っ張ってくれる、という話を聞いたことがあるだろうか。これは先輩声優さんのお芝居の流れにのせてもらえると、自分1人では出せなかった演技が自分から出る、という現象だ。表面的なセリフのやりとりではなく、もっともっと芯に響くようなお芝居をぶつけられることで、こちらも思わず芯からのセリフを返してしまう、気づかないうちに芯からのセリフが引き出されている、という魔法なのだ。
新人声優に対しても真摯なお芝居をしてくださるおかげで、お芝居を引っ張ってもらえ、演技の感覚を学んでいくことができる。スタジオでは生でビリビリとセリフが響き、アニメになって絵がついた状態とはまた違った声だけの迫力に私も何度も圧倒された。いっせいにアフレコをすると、特に若手にはメリットがたくさんあると言えるだろう。