■まるで映画のよう!?『TO THE MOON』

カナダのゲームデザイナーによる作品。ニンテンドースイッチ版が今年1月にリリースされた。

 ここまで斬新なアイディアが際立つゲームを紹介してきたので、最後はとにかくストーリーが素晴らしいゲーム『TO THE MOON』をご紹介いたします。

 本作の舞台は近未来の世界で、まもなく死を迎えようとする人物が現世に悔いを残さないよう、その人物の「夢・願望」をかなえるためにいわば「記憶を改ざんする」仕事がありました。依頼人は夢をかなえた状態で天に召されていくことができる、ということですね。

 主人公はその仕事を行っているエヴァとニールです。

 2人はある日、ジョニーという老人の依頼を受け彼の家を訪れました。彼の願いは「月に行きたい」というものでした。彼はなぜ月に行きたいのか、彼の記憶の中に入ってみるとそこには……。

 というゲームです。めちゃくちゃ気になるストーリーですよね。

 ここだけ聞くと「月に行きたいって言ってるならその夢を見せてあげりゃいいじゃん」という方もいらっしゃるかもしれませんが、彼がなぜ月に行きたいのかをきちんと把握したうえで舞台を整えてあげることがより依頼人のためになるのです(個人的な解釈)。真の意味での「月に行きたい」なのかも分かりませんしね。

 このジョニーという老人のこれまでの人生を振り返りながら、「月に行きたい」という謎を解明していくことになるのですが、このドラマが本当に切ないです。

 さらにこのゲームのミソは、ジョニーの記憶をさかのぼる順番が「過去→現在」という単純な時系列ではないところです。謎や人物関係、「なぜそうなったのか」がゲームを進めるごとに判明しては新たな疑問が生まれる、という構図となっておりプレイヤーをどんどん引き込んでくれます。なぜジョニーはこんな大きな家で一人孤独に暮らしているのでしょうか……。

感動的ストーリーと音楽が高く評価され、Steamの「泣いてなんかいない。ただ目に砂が入っただけ」の賞にノミネート。

 また、本作はパズル要素が随所にあるものの、いわゆる「ゲーム感」を味わえる瞬間はほんのわずかです。そのためプレイヤーの間では「これはゲームなのか」という議論が盛んに行われていますが、僕は間違いなく「ゲームである」と思っています。

 本作は映画や小説のようにストーリーがメインの作りになってはいますが、その進行方法やゲーム中の音楽、そして「プレイヤーがゲームである」と認識しているからこそ分かる表現もあります。ゲームの性質上、ネタバレになるのでこれ以上は言えませんが、プレイ後に「いいもん観たわ……」と涙していることでしょう。

 プレイ時間こそ5時間ほどかと思いますが本作には続編があり、さらに本作中では回収されない伏線もあります。気になって続きをプレイする、というのは時間ややる気があるときに一気にやってしまった方が印象に残りやすいものです。時間をおいてしまうと細かいストーリーを忘れてしまうこともありますからね。なので、「伏線」「考察」が好きな方はぜひプレイしてみてください。

「ゲームはシステムよりシナリオが大事だ!」という方だけでなく、難しい操作もないのでゲームが得意ではない方にもオススメな作品ですよ。

 今回は4作品を紹介しましたが、面白いインディーゲームはまだまだあります。僕自身が遊んでいないインディーゲームも星の数ほどありますので、ここにあるゲーム以外にも探してみると新たな発見があるかもしれません。

 外出自粛中で家にいる時間が増えているこの機会にぜひ、インディーゲームの海に飛び込んでみてはいかがでしょうか。

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