■メディアリテラシーを学べる!?『ヘッドライナー:ノヴィニュース』
舞台は「ノヴィスタン」という架空の国。プレイヤーは「ノヴィニュース」という新聞社の編集長となり国民にさまざまな情報を供給して、世論を「作り上げていく」ゲームです。プレイヤーがやることは単純で、毎日記者が上げてくるニュースを新聞に掲載するか否かを選択していくだけです。が、これが非常に重要となるのです。
世界情勢や政治、商品紹介にいたるまでメディアが情報操作しているんだな……と実感します。この記事は僕が好きなインディーゲームについて書いているだけですが、それすらも「誰かにこのゲームは面白いと刷り込まれて面白く感じた結果、この記事を書かされているのでは……」と自分を疑いたくなるほどです。
さすがにそれは言い過ぎな節はありますが、最近デマなどを耳にした際に「情報ソース」についてや「最初に言いだしたメディア・個人」について考えるようになったのは、このゲームをやってからであるのは間違いないです。
たとえば本作では、ある飲料会社がつくった「ベターバッズ」というお酒に関する記事が出てきます。このお酒は合成アルコール飲料で「何かしらの問題」を抱えているようでもあるのですが、その問題を指摘する記事をひた隠して「このお酒は素晴らしい!」と称賛する記事だけを掲載し続けるとノヴィスタンで大流行します。つまり国民は自分で選択しているようで「メディアに選ばされている」のです。なんだか怖いですよね。
またこの世界では人種差別問題や中毒者、かなり危険なウイルス問題もあります。この危機に対しても国民に対してどのようなメッセージを選択して、問題に対処していくのかはプレイヤー次第です。短編なので1周当たりのプレイ時間は短いのですが、選べる記事はたくさんあるので、1周目で選ばなかった記事を選んだりして「別の世界線」を楽しむといろんな見え方ができるでしょう。
SNSの発達とともに様々な情報が錯綜している昨今。個人のまとめサイトで書かれていることがまるで「真実」のように語られ、そうした真偽不明の情報を鵜呑みにしてしまう人もまだまだいます。Wikipediaに書かれていることはすべて真実だと疑わない人もいるほどです。
今、外出自粛を余儀なくされているきっかけとなった例のウイルスに関する情報や買い占め問題なども、虚実入り混じった情報が飛び交って混乱を生みました。こうした状況の中であらためてこのゲームをやると「情報は自分以外の誰かが発信したなにか」に過ぎないのだなと考えさせられます。百聞は一見にしかず、といったところでしょうか。
ゲームをプレイしていると少しずつ暗い気持ちになっていくので、爽快感や達成感を味わいたい!という方にはまったくオススメできませんが、こんなゲームもあるんだなと思ってもらえたらと思います。
ゲームという形で「メディア側の気持ち」を味わうことでメディアリテラシーを学ぶきっかけになる、ある種珍しいゲームです。