■キングオブ時間泥棒『Slay the Spire』
まず今回紹介する中で、僕がダントツでおすすめなのが『Slay the Spire』。
本作はカードデッキ構築をしながらローグライクダンジョンを遊ぶ、というかなり斬新な試みを「洋ゲーの世界観」を残しながら味わえる作品です。プレイヤーは10枚の手札を持った状態でダンジョンに入り、戦闘やイベント、お店などでカードを入手してダンジョンの攻略を目指します。
戦闘は山札からカードを5枚引き、そこからカードをプレイしていくのですが、1ターンに動けるコストは決まっているので、コストとにらめっこしながらそのターンの最適解を導き出す必要があります。これをどちらかが倒れるまでプレイヤーと敵のターンを交互に繰り返していく、というのが大まかな流れです。
山札のすべてのカードを使い切ったら、捨て札のカードをシャッフルして山札を作り直し、またそこから手札を引いてプレイしていくのですが、ここが本作のミソ。
多くのカードゲーマーの間では常識だとは思いますが、デッキには良いカードがたくさん入っていればいるほど強い、というわけではありません。もちろん山札のカードがすべて強ければそれに越したことはありませんが、たとえ切り札級の強いカードが5枚あったとしても、山札が30枚もあればなかなか引けませんよね。
山札は少ないほうが強力なカードを引ける確率は上がり、さらに山札を繰り返し使う本作のシステムにおいては「デッキの回転率」を上げて繰り返し強いカードを使えるようにしたほうが圧倒的に効率が良いです。
しかし、初期デッキの10枚は基本的な行動しかできないいわば「最弱カード」で構成されており、それだけではとても太刀打ちできなくなってくるので当然カードはどんどん入手していかなければなりません。
入手すればするほど強力なカードは引きづらくなるけど、カードがないととても戦えたもんじゃない!というこのバランスが絶妙で、プレイしてみると奥の深さを実感できるかと思います。
ちなみにカードはデッキから自由に削除することはできません。
ダンジョンの中にあるお店で削除(ダンジョンで集めたお金が必要です)できたり、イベントで除去してくれたりしますが、ローグライクなので出現はランダムです。なので、「このカード欲しいけど山札多くなるな……!」「いや、これは取っておいたほうがいいだろう!」という脳内のせめぎあい、レアカードが出たときの「これはいけるか……!?」という喜びなども味わえるというカードゲーマーもローグライクファンも楽しめるシステムにはもう脱帽です。
多種多様なイベントに個性的なキャラクター、セリフ回し、さらにカード以外にも戦闘などで有利になるアイテムもあり、ゲームとしての完成度は非常に高いです。プレイすればするほど新しい発見ができる、何時間でも遊べるどっぷりハマれるタイプのゲームだと思います。
また、本作はテンポがとても良いので、始めたら最後ガンガン時間が溶けていきます。キングオブ時間泥棒です。今、暇を持て余している方はガンガンプレイしていただきたいのですが、ニンテンドースイッチ版でDLした場合は寝る前のベッドなどでプレイするのは控えてください。それやると気がついたら朝になってます。