■ホッとした気持ちにさせられる『3月のライオン』の名脇役

 3人目の名脇役はヒューマンドラマの名作『3月のライオン』から。本作は、高校生プロ棋士・桐山零と、彼を取り巻く人情味あふれるキャラクターたちを描いた物語。柔らかで情緒的な描写に胸を打たれる読者は多いことでしょう。

 そんな作品の名脇役としては、桐山がお世話になっている川本家のおじいちゃん「川本相米二(かわもとそめじ)」を挙げたいと思います。

 両親を事故で亡くし、将棋の世界以外に居場所を見つけられなかった桐山を温かい優しさで包んだ川本家の姉妹、あかりとひなた。そんな川本家の姉妹と桐山を見守り、励ますように支えるのが相米二おじいちゃんです。

 人情深く、孫たちの溺愛ぶりはおちゃめ。登場するだけで、なんだかとてもホッとした気持ちにさせてくれる人物です。桐山の境遇に対する理解も深く、「失敗したってことは挑戦したってことだからな。なんにもやんねぇで他人のことを笑ってる人生よりずっとまともだ」など、彼の名言は胸に刺さることが多いです。

 作者の羽海野チカ氏の作風とも言えますが、本作には悪意に偏った人物はほとんど登場せず(川本家を捨てた父親くらいか)、多くが桐山に寄りそってくれる優しい人たちです。相米二おじいちゃんだけでなく、放課後理科クラブの部長・野口英作、高校教師・林田高志らも、陰ながら桐山を支えてくれる名脇役と呼べるかもしれませんね。

 ほかの作品にも「スピードワゴンはクールに去るぜ」の名ゼリフを残した『ジョジョの奇妙な冒険』のスピードワゴン、妙な懐の広さを見せる『MASTERキートン』の平賀太平、寒いギャグが持ち味の『はじめの一歩』の篠田トレーナーなど、語りたい名脇役は尽きません。また、少女漫画にも名脇役と呼ばれるキャラクターが多いので、機会があればそちらも探ってみたいところですね。

(ふたまん編集部)

  1. 1
  2. 2
  3. 3
全ての写真を見る