■かませ犬伝説に輝く『聖闘士星矢』の巨漢といえば…
車田作品における“巨漢=かませ犬”といったイメージを決定づけたのは、『聖闘士星矢』に登場する大熊座(ベアー)の檄、そして牡牛座(タウラス)のアルデバランによる功績が大きいでしょう。
青銅聖闘士の檄は、「銀河戦争(ギャラクシアンウォーズ)」で星矢の1回戦の相手として登場。その巨漢から繰り出すネックハンギングで星矢を一度は絞め落とすものの、回復した星矢に両腕と聖衣を破壊され、あえなくノックダウン。大口を叩いた割りにあっけない幕切れで、かませ犬らしい役どころでした。
そしてアルデバランは聖闘士の頂点に立つ黄金聖闘士12人の一角で、黄金聖闘士の中でもずば抜けた巨漢の聖闘士です。しかし、その扱いのレベルは登場するたびに急降下していきます。
初登場は「十二宮編」での星矢との戦いで、このときアルデバランは一応星矢に勝ちを譲るカタチで退いたものの、星矢の必殺技「ペガサス流星拳」はまったく通用せず。星矢は、本気を出していないアルデバランの聖衣の角を折っただけでした。
問題はその後です。アルデバランは「ポセイドン編」では海魔女(セイレーン)のソレントに早々に敗れ、「ハーデス編」では冥闘士との初戦、地暗星(ディープ)のニオベと対戦し、体そのものを消滅させられて死亡。しかも、ニオベ戦は前述の劉鵬と同じく、戦闘シーンすら描いてもらえず、まさに冥闘士の強さを見せつけるためのかませ犬でした。
本来、アルデバランは黄金聖闘士の一角を担う実力者のはずが、こうした扱いの悪さゆえに、ザコキャラの代名詞のような扱いになってしまったのです。
なお、記憶に残っていない人も多そうですが、『聖闘士星矢』には“カシオス”という巨漢キャラも登場します。聖域(サンクチュアリ)で星矢とペガサス座の聖衣を賭けて対決した聖闘士候補で、ブサイクで巨漢という“車田あるある”を二重に背負った、それは立派なかませ犬でした。
ちなみに『聖闘士星矢』以降の車田作品には、『SILENT KNIGHT翔』(週刊少年ジャンプ/集英社)のクルーガー、『聖闘士星矢 NEXT DIMENSION 冥王神話』の牡牛座・オックスといった巨漢キャラが引き続き登場。しかし、残念ながらアルデバランを超えるような“かませ犬”ぶりは見せられていないようです。
車田正美氏は、今年で漫画家デビューから46年目を迎えます。現在も精力的に描き続けられているため、アルデバランを上回るような“巨漢かませ犬”の登場に期待したいところですね。