2026年で国民的人気作『ルパン三世』はアニメ化55周年を迎えた。
同作は1967年よりモンキー・パンチさんが『WEEKLY漫画アクション』(双葉社)で連載していたアクション漫画が原作。1971年のテレビアニメ化以降、アニメシリーズ、テレビスペシャルなど膨大な映像作品群が制作されてきた。
その中でも、特に初期の劇場映画作品がファンに与えたインパクトは強烈だった。興行的にも大ヒットした第1作目『ルパンVS複製人間』(1978年)、宮崎駿監督らしさがあふれていた『カリオストロの城』(1979年)、アバンギャルドな作風の『バビロンの黄金伝説』(1985年)など、それぞれの良さがある。
そんな中、昭和に公開された『ルパン三世』の映像作品で、唯一、個人的に未視聴だったものを思い出した。それが1987年に劇場公開された『風魔一族の陰謀』だ。当時からアニメファンの間で賛否の声があり、なぜか見る機会がなかった作品である。
だが、『ルパン三世』のアニメ化55周年を機に、『風魔一族の陰謀』を初視聴。公開から約40年の時が経ち、時代も移り変わった令和に見る『風魔一族の陰謀』に何を感じたのか、あらためて綴ってみたい。
※本記事には作品の内容を含みます。
■ファンも驚いた、まさかのキャスト総入れ替え
1987年12月26日に劇場公開された『ルパン三世 風魔一族の陰謀』だが、実はシリーズ初となるOVA(オリジナルビデオアニメーション)として制作された作品である。1988年4月5日のOVA発売に先駆け、全国の映画館で小規模ながら先行上映を行ったという経緯があった。
そして本作最大の特徴であり、当時の『ルパン』ファンに大きな衝撃を与えたのが、「主要声優陣の刷新」である。
なじみ深いルパン一味の声は全員変わり、ルパン役は山田康雄さんから古川登志夫さんに変更。次元大介役は銀河万丈さん、石川五ェ門役は塩沢兼人さん、峰不二子役は小山茉美さんという顔ぶれになっている。
そして山田ルパンと並ぶ作品の顔ともいえる銭形警部の声も、納谷悟朗さんから加藤精三さんに変更されていた。
この大胆な試みは、当時ファンの間で激しい論争を巻き起こし、この話題にリアルタイムで触れた筆者も正直困惑した一人だった。
一方、メインキャストの総入れ替えという大きな話題に隠れがちだが、アニメ制作陣はおなじみの顔ぶれが並んでいる。作画の神様・大塚康生さんが監修を務め、『カリオストロの城』の流れを汲むテレコム・アニメーションフィルムの精鋭たちが集結していた。
■圧巻の映像表現と散りばめられた過去作のオマージュ
物語は、石川五ェ門と飛騨の名士・墨縄家の跡取り娘・紫の祝言が行われる中、謎の忍者集団「風魔一族」が乱入するところから始まる。彼らは墨縄家に代々伝わる「秘伝の壺」を奪おうとするが、ルパン、次元、不二子らがこれを妨害。しかし、紫が人質として誘拐され、ルパンたちは風魔一族を追うことになる。そこに、ルパン逮捕に執念を燃やす銭形警部も加わり、財宝を巡る三つ巴の争奪戦が幕を開けるのだ。
『風魔一族の陰謀』の絵柄は初期のテレビシリーズ(旧ルパン)や、映画『ルパンVS複製人間』に近く、精悍で鋭い顔つきが印象的。いきなり五ェ門が婿入りするという展開に驚きつつ、冒頭のアクションやキャラクターの表情などの描写は見事で、率直に感心させられる。
他にも麻倉未稀さんが歌う主題歌『セラヴィと言わないで』が流れる中、ルパンが死んだと思い込んで出家した銭形の日常を丁寧に追いかけるシーンにも、コミカルさと悲哀が詰まっており『ルパン』らしさが感じられた。
そして、本作には過去作のオマージュと思われる部分がいくつも見受けられる。たとえば、目の前でルパンが死んだと絶望する銭形の姿は、旧ルパン(第1シリーズ)の最終回を彷彿とさせる。
また、前作映画『バビロンの黄金伝説』ではルパンのジャケットはピンク色だったが、本作では緑ジャケットに戻った。そして劇中でルパンが紫に貸してあげるのは「赤ジャケット」という粋な演出である。
さらに、銭形のパトカーと言えば「埼玉県警」のイメージが強いが、本作では舞台となる「岐阜県警」仕様になっていたのも興味深い。物理法則を無視して屋根や壁を縦横無尽に駆け抜けるカーチェイス、大勢のキャラクターが繰り広げる大乱闘シーンなど、アニメーションのクオリティは極めて高く、さすがは大塚康生さん&テレコムの作画だと唸らされた。


