■実力派キャストの熱演と、耳が探してしまう「いつもの音」

 まず声優変更に対する先入観を脇に置いて、客観的に見ると、本作でルパン役を務めた古川さんをはじめ、主要キャスト陣の演技は文句のつけようがないクオリティだ。

 思い返せば、旧ルパン(第1シリーズ)から新ルパン(第2シリーズ)に移行する際も、不二子役は二階堂有希子さんから増山江威子さんへ、五ェ門役も大塚周夫さんから井上真樹夫さんへの交代が行われてきた。

 それをリアルタイムで見てきた身としては、彼らの声が変わること自体にそこまで抵抗はなく、個人的には今回不二子役を務めた小山さんや、五ェ門役を務めた塩沢さんの声に大きな違和感は感じなかった。

 ただ、いつものキャストに慣れ親しんでいたこともあって、ふとした瞬間に「いつものメンバーだったらこう演じたのでは…」といった思いもよぎる。これは演技の優劣ではなく、長年刷り込まれた記憶の仕業だろう。

 しかし、個人的には声の変更以上に物足りなさを感じてしまったのが「音楽」の違いだ。曲自体はどれも悪くないのだが、銭形警部の登場シーンで流れる「銭形マーチ」をはじめ、『ルパン三世』で耳慣れたフレーズがまったく流れないため、つい耳が「いつもの音」を探してしまうのだ。

 不思議に思って調べてみたところ『風魔一族の陰謀』は、大半の『ルパン三世』作品の音楽を手がけてきた大野雄二さんではなく、宮浦清さんが起用されたのが理由だった。そのため、劇場長編・OVA作品の中で唯一『ルパン三世のテーマ』が一度も使用されない珍しい作品でもある。

■五ェ門の純情と、そこはかとなく感じた『カリオストロ』の名残り

 本作は五ェ門を中心としたストーリー構成になっており、彼の見せ場が非常に多い。紫と五ェ門が少しずつ心を通わせ、いつしか真剣に互いを思い合う過程も、非常に丁寧に描かれ、特に五ェ門ファンには見応えのある物語だ。

 からくりだらけの洞窟、黄金でできた城、少女のために戦って宝は失うものの、「大事なもの」は守り抜く展開。そしてラストシーンで、紫に別れを告げる五ェ門など……随所にどことなく『カリオストロの城』を彷彿とさせるエッセンスも散りばめられている。

 73分の中に、盛り上がりと仕掛けがこれでもかと凝縮された本作。1本のアニメ映画として見ると、十分傑作といっていい内容だったと思う。

 しかし『風魔一族の陰謀』の公開当時、ファンの間で声優変更に端を発する激しい論争が巻き起こり、何となく黒歴史のように見られがちな不遇な作品でもあった。

 実際、同作でルパン役を務めた古川さんは、のちにスピンオフ作品『LUPIN ZERO』でルパン二世役を担うことをSNSで発表した際、「そう、ルパンですよ! いろ~んな思い出のある作品なだけに、令和の今、また『彼』に関われるとは!」「何か積年のわだかまりが自分の中ですっきり解決できたような心地です」と語っていた。

 そして、このタイミングに古川さんは『風魔一族の陰謀』を自身の公式プロフィールに書き加え、多くのファンからお祝いの言葉をもらっていたほどだ。


 声優変更は、いつの時代もアニメファンにとって非常にデリケートなトピックだ。しかし、そこから生まれた作品を実際に見てみると、それまで抱いていた先入観が一変することもあるのだ。

 2025年6月から、U-NEXTやHuluをはじめ、多くの配信サイトで『ルパン三世 風魔一族の陰謀』は視聴可能になった。筆者と同様、これまで何となく未視聴だった人も、アニメ化55周年のこのタイミングに、あらためてチェックしてみるのはいかがだろうか。

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