日向夏さんによる大ヒットライトノベルを原作とし、漫画版、アニメ版も国内外で高い人気を集める『薬屋のひとりごと』。華やかな後宮を舞台に繰り広げられる本格的なミステリーや、そこで交錯する濃密な人間ドラマは、多くのファンを魅了し続けている。
本作において、ひときわ強烈な存在感を放つのが、主人公・猫猫(マオマオ)だ。
彼女はいわゆる、“王道のヒロイン”ではない。無愛想で探究心が強く、筋金入りのオタク気質であり、ときどき周囲が驚くほどの大胆不敵さを見せる。それでいて、ふとした瞬間に見せる表情や毒気のある言動が、どうしようもなくクセになる。そんな唯一無二のキャラクター性こそが、猫猫の最大の魅力だろう。
2028年にはPrime Videoにて実写ドラマ化されることが決定。主人公・猫猫を芦田愛菜さんが演じることが発表され、ファンの期待は最高潮に高まっている。
そこで今回は実写化が決まった今だからこそ、型にハマらないヒロイン・猫猫の絶対的な魅力をあらためて振り返ってみたい。
※本記事には作品の内容を含みます。
■毒や薬に目がない! 猫猫の危うすぎる探究心
猫猫のキャラクターを語る上でまず外せないのが、薬師としてのたしかな知識と、毒や薬に対する異常なまでの好奇心だ。
養父・羅門(ルォメン)のもとで幼い頃から薬学について鍛えられてきた彼女にとって、薬草や毒物は単なる知識の枠におさまらない。未知の成分や身体への作用を知るためなら、自ら試すことすら厭わない。それほどまでに、薬や毒そのものへの探究心が強いのだ。
そんな猫猫にとって、後宮で任された毒見役はまさに「天職」だった。
アニメ第6話「園遊会」では、上級妃に振る舞われたスープの毒見を担当。一口飲んだ猫猫は、思わずうっとりと恍惚の表情を浮かべる。
「いったいどれほど美味しいスープなんだろう?」と思わせる優雅な振る舞いだったが、その次の瞬間に放たれたのは「これ、毒です」という衝撃的なひと言だった。
スープに毒が仕込まれていたことで、普通なら動揺するところだが、猫猫の反応は斜め上を行く。彼女は冷静に毒を吐き出すと「あのまま飲み込みたかった」と名残惜しそうにし、残ったスープまで欲しがる始末。
危険な毒を前にして恐れるどころか、その正体や作用への興味が勝ってしまうのである。まさに、彼女の薬師としての矜持と、毒への並々ならぬ執着が凝縮された名場面だ。
危険なものほど目を輝かせ、毒を前にすると嬉々とする異常なまでの知識欲。それこそが、猫猫を“単なるヒロイン”では終わらせない絶対的な魅力のひとつなのである。
■薬師の知識で謎を解く! 猫猫の冷静すぎる推理力
猫猫が薬師としての知識を武器に、後宮で起きるさまざまな難題に立ち向かうミステリー要素も、本作の大きな魅力だ。
その代表的なエピソードが、アニメ第4話「恫喝」である。上級妃・梨花(リファ)妃の治療を命じられた猫猫。そこで彼女が目にしたのは、衰弱しきった妃に、すでに禁止されていたはずの鉛入りのおしろいが再び使われているという、あまりにも異常な光景だった。
しかも、かつて梨花妃が生んだ御子も、このおしろいが原因で命を落としていた。彼女にとって因縁ともいえる毒が、再びその身を蝕んでいたのである。
原因は、妃を思うがゆえの侍女たちの無知と妄信だった。“梨花妃にきれいでいてほしい”という一方的な思いから、おしろいを使い続けていたのである。
猫猫は犯人である侍女を平手打ちし、さらにその頭におしろいをぶちまける。それでも「梨花様が喜ぶと思って」と言い張る侍女に対し、猫猫は顔をぐっと引き寄せ、「毒だっつってんだろうが」と一喝。ふだんの淡々とした態度からは想像もつかない剣幕に、我々視聴者も圧倒されるほどだった。
しかし、猫猫の真価はここから発揮される。原因を突き止めて終わりというわけではなく、治療においてもその手腕は見事だった。
彼女はおしろいの使用を禁じ、部屋の換気を徹底。食事も重湯からはじめ、粥へと少しずつ変えていく。さらに、汗をかかせる蒸気風呂まで用意し、梨花妃の体内の毒を排出させた。そういった献身的な治療を続けた結果、見事、梨花妃を回復に導いたのである。
豊富な知識で真相を見抜くだけでなく、必要なら身分の高い相手にも意見し、救うためなら自ら行動する。そんな強さと優しさが同居しているところも、猫猫の魅力に深みを与えている理由だろう。


