■五郎の愛情に胸が締め付けられた“泥のついた1万円札”

 父と子の絆を描いた名場面といえば、スペシャルドラマ『’87初恋』で描かれた“泥の付いた1万円札”を挙げる人も多いだろう。

 当時の純と螢は中学生。純は思春期を迎え、同級生のミステリアスな少女・大里れいに初恋をしていた。やがてれいが中学卒業後に上京すると知った純は、自分も東京へ行きたいという思いに駆られていく。

 東京に住む雪子おばさんに相談しながら、密かに上京の計画を進める純。しかし、それを五郎にはなかなか言い出せなかった。親には言えない悩みというのはあるものだが、もともと口下手な五郎との間にある対話のハードルは高い。純の中で膨らむ父に負担をかけたくないという思いと、年々老いていく父の姿に対する複雑な心境が、親子の間にすれ違いを生んでいった。

 だが、隠し事がいつまでも続くはずもなく、五郎は人づてに純の進路希望を知り2人は衝突してしまう。そんな折、れいの母親が事故で亡くなり、大里家は夜逃げのように富良野を去ってしまった。打ちのめされた純は東京行きの気持ちも薄れていった。

 その裏で五郎は純のため、東京行きのトラックの運転手に彼を乗せてくれるよう頼み込んでいた。そのとき五郎が言った「疲れたらいつでも帰ってこい。お前が帰る部屋はずっと空けとく」という温かい言葉に、純同様に心を動かされた人も多いのではないだろうか。

 迎えた出発の時。純がトラックに乗り込み、れいとの思い出が詰まった尾崎豊を聞いていると、運転手がダッシュボードに置かれた封筒をしまえという。中には泥の付いたピン札の1万円が2枚。

「お前の父さんの手についた泥だろう。おらあ受けとれん。お前の宝にしろ。貴重なピン札だ。一生とっとけ」

 純のために汗水たらして懸命に働き、やっとの思いで手にした2万円。運転手のこの言葉が、五郎の真っすぐな愛を何よりも物語っていた。純は札についた泥を見つめながら、父と過ごした富良野での日々を想うのであった。

 

 様々な問題にぶつかり、時にはすれ違いながらもともに人生を積み重ねていった黒板家。捨てられた靴も、あの名セリフも、泥の付いた1万円札も、すべては五郎と子どもたちの間にある深い愛情を物語っている。

 今回の再放送を機に、改めて心に残る名場面の数々を振り返りながら『北の国から』を見返してみてはいかがだろうか。

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