■同じく「人殺し」が起きても、コナンとちいかわで違うところ

 しんちゃんを見終えホクホク顔の男子2人に「ちいかわ、どうだった?」と感想を求められました。あらすじを話すと、友達が「えー、人殺ししたの?」と一言。

 人殺し。たしかに、あれは紛れもない人殺しでした。そこで気づきました、“子ども向けの映画って、人を殺さないよなあ”と。「そういえば、しんちゃんとかドラえもんとか、バトルするけど殺してないね」と聞くと「うん。倒してるけど殺してない」と友達が続けます。

「でもさ、『鬼滅の刃』は殺してるんじゃない? 血、めっちゃ出るし」
 筆者がそう聞くと、「鬼滅は人殺しじゃないよー」「あれはちがうよねー?」とふたりで顔を見合わせますが、それ以上は言葉にできないようでした。

 同時に思い返すのは、長男の友達が、ちいかわの映画を「コナンみたい」と評したことでした。いやいや、まったくコナン感なかったよ。コナンは、殺人が物語を稼働させるためのいわば小道具として配置されているエンタメでありミステリーですが、今作はそうではないと、大人である筆者は思うのです。

 悪意なく、むしろ善意で最悪の罪を犯した。それを第三者が知ってしまった。第三者は、見て見ぬふりをした。誰がどんな罪を犯したのか、誰がどんな罰を受けるのか……という、いかにも人間的なわりきれなさ、正解のなさで構成された本作を、コナン的というには野暮ではないでしょうか。

 多くの大人は、殺人という最悪の事態ではないにしろ、同じような場面の発端となったり立ち会ったり、人を巻き込んでしまったり、結果、自分を恥じたり記憶に蓋をしたり、という黒歴史を抱えているはず。

 本作は子ども向けを謳っていませんが、夏休み上映ということもあり、しんちゃんやミニオンズを観に行くのと同じようなテンションで足を運んだ家族連れも多いかと思います。

 すると、黒歴史を抱えた親はまさに鈍器で殴られたような感覚に陥り、子どもはいままで体感したことのない生々しさを消化しきれず、「気持ちが悪くなる映画」「鬼滅とはちょっと違う」「コナンみたいかもしれない」と、今まで触れてきたエンタメと既知の感情で、なんとなく腑に落とすのかもしれません。

 帰宅すると、ちょうど長男が「コナンみたい」と表した友達とLINE中。「全然コナンみたいじゃなかったよ! もっとこう、道徳の授業みたいだったよ! って送っといてよ」と筆者が言うと、長男は、うぜえ、という顔をしながら「特典なんだった? メルカリに出していい?」と情緒の欠片もなく、筆者から特典を奪おうとしたのでした。

 こういう子どもも、大人になったら本作をおもしろく観ることができるのでしょうか。ショート動画から足を洗い、酸いも甘いも噛み分け、清濁も併せ呑んで、豊かな感性を育んでほしいと願わずにはいられませんでした。

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