■戦場に生きる男たちが纏う血と硝煙のリアリズム
最後は、ストイックな戦場描写で知られる高橋良輔監督と、武骨ながらも魅力的なキャラクターを描くアニメーター・塩山紀生氏のコンビを取り上げたい。両氏が携わった作品に共通するのは、決して華やかなヒーローではなく、時代の歯車として消費されるキャラクターの切実な姿を冷徹に描いた点だ。
血と鉄と硝煙に満ちた高橋監督の世界観を舞台に、塩山氏は泥臭くもどこか色気と人間味のある男たちを描き、戦場に生きる人間の力強い息づかいを吹き込んだ。その本領が発揮されたのが『装甲騎兵ボトムズ』(1983年)である。
百年戦争の末期、軍の最高機密を目撃したことで追われる身となった兵士キリコ・キュービィーは、謎の美女フィアナとの出会いを機に、巨大な陰謀へと巻き込まれていくという物語だ。
印象的なのは、ロボットアニメの主人公らしからぬ無口で無愛想な主人公・キリコの存在。当初は人間らしい感情を失っており、次第に本来の心を取り戻していくことになる。塩山氏が描くキリコは端正なビジュアルではあるが、死線を潜り抜けて来た男の「凄み」と「疲弊」がにじんでおり、鋭い眼光と引き締められた口元にそれまで歩んできた道の険しさが表現されていた。
そして高橋監督の演出は、全編に流れる乾いたナレーションに象徴されるように、ドキュメンタリータッチで淡々と戦況を描いている。そこに塩山氏が描く「寡黙なキリコ」と「泥臭く生きる人間たち」が融合し、ハードボイルド小説にも似た「ヒリつくような緊張感」が感じられた。
今回は、昭和のアニメ史を代表する3組の黄金コンビを振り返ってみた。面白いのは、いずれのコンビも監督と作画担当という組み合わせである点だ。当時のアニメーションは手描きのアナログ作業であり、監督の考えを具現化する役割を担ったキャラクターデザインや作画監督の存在は、今以上に大きかったのかも知れない。
監督がコンテに込めた想いを作画監督が読み取り、自身の持ちうる技術と経験で返す。その相互の信頼関係が構築されていたからこそ、多くの傑作が生まれたのは間違いないだろう。


