1970年代から80年代後期の日本アニメ界は数々の有名作が誕生しており、「昭和アニメ黄金期」とも呼ばれている。それを築いたのは、誰もが知っているような伝説的なクリエイターたちである。
そしてクリエイター同士が強力なタッグを組んだことで生まれた名作も数多い。圧倒的なセンスと強烈な個性が見事に調和し、視聴者に「この2人の作品なら大丈夫」という絶大の安心感を与えた。
そこで今回は、昭和のアニメ史に燦然と輝く3組の「黄金コンビ」を振り返ってみたい。
■人間の感情を具現化した「あおりアングル」と壮大な「生と死の物語」
『機動戦士ガンダム』(1979年)は、子ども向けの作品が大半だった当時のロボットアニメで、富野由悠季監督がリアルな戦争を描いた傑作だ。同作では、キャラクターデザインを担当した安彦良和氏と富野監督の名コンビは有名だろう。
それと同様に、富野監督とのコンビで忘れてはならないのが、アニメーターの湖川友謙氏(旧名は湖川滋)である。富野・湖川コンビは『戦闘メカ ザブングル』(1982年)や『聖戦士ダンバイン』(1983年)をはじめ、数々のロボットアニメで監督とキャラクターデザイナーとしてタッグを組み、人間の愛や情念、醜悪な憎しみを描き続けた。
そのコンビの始まりであり、真骨頂ともいえるのが『伝説巨神イデオン』(1980年)である。
ロボットアニメでありながら、富野氏が紡ぐ生々しい物語と、湖川氏が描く生き生きとしたキャラクターが融合することで、本作は「人間の愛憎ドラマ」へと昇華された。
それを見事に演出したのが、登場人物たちのエゴや強烈な感情を表現するために、パース(遠近法)をきかせて肉体を「歪ませる」、湖川氏ならではの表現手法だ。単にリアルなだけでなく、“リアリティ”を追求することで人間らしさが増し、富野氏のやや大仰なセリフ回しに説得力をもたらした。
特に湖川氏は、キャラクターの下あごを強調したローアングル……いわゆる「湖川あおり」と呼ばれる独特の構図を多用。これにより、極限状態に置かれた人間のさまざまな感情が、歪んだ表情から生々しく伝わってきた。
個人的に印象的だったのが、敵対するバッフ・クランの女性カララ・アジバと、その姉ハルルの関係性だ。バッフ・クランの軍人として生きるハルルは、地球人側につき、対話に訪れた妹カララを辱め、笑うよう部下に命じる。
その根底には、異星人の男性と結ばれ、女性としての幸せをつかんだ妹に対する憎悪が込められており、まさに富野氏らしい複雑な人間模様があった。
そして湖川氏が描き上げたカララの造形は、まるでマネキンのように端正で美しかった。だからこそ、ハルルの放った銃弾が彼女の顔面に直撃するという凄惨なシーンに憎悪が漏れ出し、その表現に圧倒されたのである。
■光と影が織りなす「男の叙事詩」と、圧倒的画力による「静止画の美学」
実験的かつ劇的な演出で知られる出﨑統監督と、キャラクターデザインの杉野昭夫氏の名コンビも忘れられない。この二人が生み出した作品には独創的な表現技法が用いられ、出﨑監督による過剰なまでの演出に、杉野氏は圧倒的な画力で完璧に応えた。
出﨑氏が監督を務めたアニメ『家なき子』(1977年)や『劇場版 エースをねらえ!』(1979年)でも二人の呼吸は噛み合ったが、この黄金コンビを語る上で外せないのが『あしたのジョー』(1970年)である。同作は出﨑氏の初監督作品であり、杉野氏と初めて本格的にコンビを組んだ作品でもあった。
身寄りのない不良少年・矢吹丈がライバルとの死闘を経てボクサーとして成長していく物語。中でも『あしたのジョー2』(1980年)の最終回、世界王者ホセ・メンドーサとの死闘後に燃え尽きたジョーの姿は日本アニメ史に残る名シーンである。
後期主題歌『MIDNIGHT BLUES』が流れる中、それまで騒然としていた試合会場は無音になり、リングコーナーで「真っ白」になったジョーの一枚絵が少しずつアップになる。まるで時が止まったかのような演出で、視聴者の視線をクギづけにする印象的なシーンだ。
これは出﨑演出の代名詞でもある「ハーモニー処理(背景とセル画を一体化させた精密な静止画)」によって、劇中の「一瞬」を強烈に印象づける場面でもあった。そして、それを見事に成立させたのが、作画監督を務めた杉野氏の圧倒的な画力である。
命を燃やして戦ったジョーは精根尽き果て、肉体はボロボロ。それなのに、彼が穏やかなほほ笑みを浮かべていることで、すべてを出し尽くした男の充実感すら感じられた。


