■「悪意」や「罪悪感」を理解するために人を殺す矛盾

 2027年10月からの放送が決まったテレビアニメ『葬送のフリーレン』第3期「黄金郷編」では、人間と魔族が互いに分かり合えないことをさらに象徴する魔族「黄金郷のマハト」が登場する。ここからは原作未読のアニメファンのため、詳細は伏せながら語っていこう。

 彼は「悪意」や「罪悪感」という人間の感情を理解するため、多くの人間を虐殺する。漫画の第87話でマハトは、彼が殺した神父から「可哀想に…」と憐れみの言葉をかけられる。それをきっかけに、自分にそういった感情がないという事実に気づくのだ。

 人類では当たり前の感情が欠落していることに疑問を抱いた彼は「もっと人間を知りたい」と願うようになり、積極的に人間とかかわろうとする。だが、その方法も「人間同士を殺し合わせる」「かけがえのない人たちを皆殺しにする」など、結局は人間を殺めるやり方しかできなかった。

 人間の感情を理解するために人間を殺すのはひどい矛盾だが、そういう思考に至ってしまうのが魔族の本質なのだ。もしかしたら魔王も、共存のために人間の“何か”を理解しようとした結果、世界を滅ぼしかけたのかもしれない。

 

 作中に登場する“無名の大魔族”ソリテールは、魔族の生態について「姿形は似ていても私達は人類とは程遠い」と語っている。外見が人間に近いからこそ、「理解できるかもしれない」と考え、その結果、谷のように深い断絶に唖然とさせられるのだろう。

 『葬送のフリーレン』の物語が結末を迎えるまでに、種族としての習性を乗り越え、真に人類を理解する魔族は現れるのだろうか。その時、作品世界の人間たちは彼らとどう向き合うのかも興味深い。

 

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葬送のフリーレン(1) (少年サンデーコミックス)
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