■耽美な世界観と妖艶なキャラが紡ぐ怪奇幻想譚『吸血姫美夕』
1988年に発売された『吸血姫美夕(ヴァンパイア ミユ)』は、昭和の終わりに登場した怪奇幻想OVA。『イクサー1』で鮮烈な監督デビューを果たした平野俊弘氏(現、俊貴氏)が、キャラクターデザインの垣野内成美氏とのタッグで生み出した全4話の作品である。
物語の主人公・美夕は、人の心に入り込んで寄生する闇の存在「神魔」を見つけ出し、再び闇へと送り返す吸血姫(ヴァンパイア)の少女。彼女に血を吸われた人間は、苦痛から解放されて永遠の幸福な夢の中に閉じ込められる。ちなみに美しき西洋神魔・ラヴァは、美夕に血を吸われて彼女の忠実なしもべとなった。
和風ホラーである本作の魅力は、なんといっても「耽美」を極めた独特の世界観と、圧倒的に美しい映像クオリティである。
そして80年代後半のOVAは、作家性の強いマニアックなテーマとも親和性が高かった。手描きセル特有の艶やかな色彩、和楽器をとりいれた豪華な楽曲などは作品の雰囲気と見事にマッチ。美夕の着物がなめらかに舞い踊り、彼女が犠牲者に送るわずかな視線の変化まで緻密に表現され、あの映像美は今も忘れることができないほどだ。
劇中における神魔との戦いは派手なアクションよりも、人間が秘める孤独、嫉妬、執着といった「心の闇」をえぐり出す人間ドラマが見どころ。美夕に救いを求めて血を吸われ、抜け殻のようになってほほ笑む人間の姿は悲劇的ではあるが、どこかエロティシズムを感じさせ、視聴者の心に強烈な切なさを残した。
また、美夕を演じた声優・渡辺菜生子さんの儚くも凛とした声の演技も見事。彼女の影として行動するラヴァ役の塩沢兼人さん、そして美夕を追う霊媒師・瀬一三子(せ・ひみこ)を演じた小山茉美さんなど、実力派が見せる熱演も物語を引き立てた。
美少女OVAの一角を担いながらも『吸血姫美夕』の繊細な映像表現や切ない物語は、多くの女性ファンをも虜にした。
80年代後半に生まれた、これらのOVA3作品は、リアルロボット、SFアクション、和風ホラーとまったく異なるジャンルである。共通しているのは、のちに業界のトップランナーとなる若き才能による挑戦的な試みが随所に盛り込まれた、秀逸なアニメーションである点だろう。
出始めの頃に比べたら昭和後期はかなり価格は下がったとはいえ、まだまだ庶民には「高嶺の花」だったOVA。レンタルしてきたビデオテープを再生し、テレビに映し出された美しい映像を見た時の感動はいまだに忘れられない。
■傑作『吸血姫 美夕』の新作が令和に連載開始!



