世界初の「OVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)」は、1983年(昭和58年)に鳥海永行氏と押井守氏が共同監督を務めた作品『ダロス』である。
OVAとはテレビアニメやアニメ映画ではない、「ビデオ」という記録メディアでリリースされたアニメ作品を指す。テレビアニメのようにスポンサーや放送時間による制約はなく、“表現の規制”から解放される「OVA」という舞台は、チャレンジングな姿勢を見せるクリエイターにとって、まさにアイデアの実験場でもあった。
80年代後半になると、メディアミックスの先駆けとなった『機動警察パトレイバー』や、約12年に渡り本伝110話+外伝52話という壮大な物語を紡いだ『銀河英雄伝説』、そして庵野秀明監督の名を世に刻んだ『トップをねらえ!』など、今なお語り継がれる傑作OVAが次々誕生している。
そんなOVAが市場を席巻していたあの時代、のちにアニメ界にその名が知れ渡ることになるクリエイターたちが才能を惜しみなく注ぎ込んだ。その結果、当時のアニメファンをうならせるハイクオリティな作品もたくさん生まれたのである。
そこで今回はOVAを借りるためレンタルビデオ店に足しげく通った筆者が、個人的に魅了された昭和後期の「隠れた名作OVA」をあらためて振り返ってみたい。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■対ATライフルを武器に復讐に挑むリアルとカタルシス!『機甲猟兵メロウリンク』
1988年に発売されたOVA『機甲猟兵メロウリンク』は、サンライズが製作した全12話(各巻2話・全6巻)のロボットアニメである。
『装甲騎兵ボトムズ』の高橋良輔氏が原作を手がけ、監督は『太陽の牙ダグラム』で高橋氏とタッグを組んだ神田武幸氏が担当。キャラクターデザインは『蒼き流星SPTレイズナー』の谷口守泰氏、メカニックデザインは大河原邦男氏という豪華な顔ぶれである。
物語の主人公はメロウリンク・アリティ。彼は友軍から捨て石にされたシュエップス小隊唯一の生き残りである。生還したものの敵前逃亡と公金横領の濡れ衣を着せられた彼は、それが物資を隠匿した軍高官たちの陰謀だと知る。そしてメロウリンクは、死んでいった仲間たちの名誉を守り、その無念を晴らすために復讐を始めるのである。
そんな本作は、1983年に放映されたテレビアニメ『ボトムズ』の前日譚であり、百年戦争終結2か月後からスタートする外伝作品。『ボトムズ』本編から独立したストーリーではあるが、舞台となる歴史や世界観などはクロスオーバーしている。ちなみに劇中には『ボトムズ』の主人公キリコ・キュービィーによく似たモブキャラも登場した。
そんな本作の最大の魅力は、ロボットアニメでありながら、主人公が“生身”でロボット(AT=アーマードトルーパー)を倒す点にある。メロウリンクが所属していた小隊は、もともと人型兵器ATを活用する装甲騎兵であったが、隊長が作戦に異議を申し立てた結果、生身でAT撃破を目的とする特殊歩兵・機甲猟兵にされていた。
劇中、メロウリンクは復讐相手を探し出し、死んだ仲間のドッグタグ(認識票)を見せることで罪を思い出させる。そのうえで罠を仕掛け、巨大な「パイルバンカー(金属杭)」などで絶命させていくという壮絶な復讐劇が描かれる。相手が醜悪であればあるほど復讐成功時のカタルシスは大きく、生々しい描写も多かった。
また「鉄の棺桶」と称されるATの薄い装甲とサイズ感が、人間にもギリギリ倒せるという絶妙なバランスとリアリティを演出。このあたりは高橋・神田両氏が携わったテレビアニメ『ダグラム』の泥臭い戦い方を彷彿させた。
どの脚本も非常に尖った内容で、各話20分の尺を目いっぱい使ったドラマを展開。魅力的な登場人物も多く、女性ディーラーのルルシー・ラモン、メルキア軍の情報将校であるキーク・キャラダイン、そしてメロウリンクという3人の絶妙な関係性が物語をより深く、意外な展開へと転がしていくのも面白かった。


