■才覚に恵まれていたわけではない、努力に裏打ちされた細木数子の魅力

 このドラマを見て、天才が「天才」と言われるのを嫌がる理由が分かった。

 才能があることを褒められた際、「天才って言われるのがいやだ」と言う人がいる。わたしは、「なんで? 天才って褒め言葉じゃん。なんなら、わたしも言われたいが?」と思っていた。しかし、『地獄に堕ちるわよ』を見て、その意味がようやく分かった。天才という言葉は、ときにその人が積み重ねてきた努力や執念、そして過去の経験までを一瞬で“才能”とのひと言で片づけてしまうのだ。

 細木数子には、たしかに天性の才能があった。しかし、彼女は天才だからのし上がってこられたわけではない。作中で聖瀰玲(中村優子)に「一人前になりたいなら、10年は勉強しないと」と言われた細木数子は、普通の人が10年かかる量をたった1年で習得してしまう。

 きっと、寝る間も惜しんで努力を重ねたのだろう。彼女と同じような才能を持っていても、誰もが細木数子になれるわけじゃない。人生を変えるためなら、自分を極限まで追い込むことができるエネルギーが、彼女を日本でいちばん有名な占い師・細木数子へとのし上がらせたのだ。

「あたし、占いなんて信じないの」

 最終話、作家の魚澄美乃里(伊藤沙莉)に「お元気で。細木さん、もうすぐ大殺界が始まりますから」と言われた細木数子は、そう言い返した。

 このセリフを聞いたとき、わたしは「この瞬間のために、ここまで『地獄に堕ちるわよ』を見続けてきたのかもしれない」と思った。

 占いで他人の、そして自分の人生を変えてきた彼女が、最後の最後でそんなことを言い出すなんて。その皮肉さと人間臭さに、一気に心をつかまれてしまったのである。

 もしかしたら、細木数子は最初から“運命”なんてものは信じていなかったのかもしれない。ただ、「運命なんて、自分の力で変えるものでしょう?」と言いそうな強さを感じさせる一方で、大殺界のような目に見えないものを本気で信じるピュアさも同時にあったようにも思える。

 最終回まで見ても、本当の彼女はつかめない。だからこそ、いつまでも考えてしまう。

 ああ、やっぱり細木数子は魔性の怪物なのだ。

 

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