最近、年下の友人に「何星人?」と聞いたら「……え?」という顔をされた。どうやら、平成二桁生まれの多くは“六星占術”(※1)を通っていないらしい。
筆者はというと、母が当時『ズバリ言うわよ!』(※2)を熱心に見ていたこともあり、年始には細木数子が表紙の“あの書籍”(※3)を買うのが、なかば恒例行事のようになっていた。
今年は、“良い年”なのか。それとも“大殺界”なのか──子どもながらにみょうに気にして、「どうやら今年は運気が悪いらしい」と知るだけで、なんとなく気分が沈んだ記憶がある。
振り返れば、「ただの占いに左右されすぎじゃない?」とも思うが、2000年代は、それほどまでに細木数子の言葉に力があった時代なのである。
(※1)細木数子が、土星、金星、火星、天王星、木星、水星の6つの運命星に分類して占うと提唱した手法。それぞれの運命星を持つ人物を土星人、金星人、火星人、天王星人、木星人、水星人と称している。
(※2)TBS系で2004~2008年まで放送されていた、バラエティ番組。細木数子が六星占術を用いて、人生相談に乗るという内容。
(※3)『六星占術によるあなたの運命』。運命星ごとに、毎年の運勢を記した書籍が刊行されている(2020年度版以降は、細木かおり)
「見たタイミングが大殺界の年だったら気分が落ちるから、読むのやーめよっ」と思ってから、しばらく六星占術から離れていた私だったが、細木数子の波乱の半生を描いたドラマ『地獄に堕ちるわよ』(Netflix)が配信されたことで、ふたたびその存在を思い出した。
どうやら、天王星人プラスのわたしは、昨年まで大殺界だったらしい。今年からは“種子”といって、新しいことを始めるのに適した時期に入ったという。たしかに、当たっている。「2026年になって、運気が良くなってきた気がする」と浮かれていたタイミングだったものだから、「細木数子って、やっぱりすごいんじゃね?」とまんまとドラマの世界にも引きずり込まれてしまった。
■朝からは絶対に見たくない でも、“裏”の朝ドラがあったらこんな感じ?
わたしは、女性のサクセスストーリーが好きだ。だから、朝ドラもよく見る。どんなに困難な状況にいても、希望を捨てずに前を向いて生きているヒロインを見ると、不思議と勇気が湧いてくるのだ。
『地獄に堕ちるわよ』は、「この物語は事実に基づいた虚構である」と書かれているため、あくまでフィクションとして読み解いていくべき作品だとは思う。しかし、本作に登場する細木数子は、どうしても、あの“私が当時見ていた細木数子”と重なってしまうのだ。
『地獄に堕ちるわよ』の細木数子は、“裏”朝ドラヒロインのような半生だ。例えば、真の朝ドラヒロインは、どん底にいても光の存在を信じて前に進んでいく。一方で、細木数子は執念や怒りを燃料にして這い上がっていくタイプだ。
まず、第1話の大部分で、彼女の幼少期が描かれる(こういうところも、朝ドラっぽい)。1938年に生まれた細木数子は戦時中の貧しい時代を生き抜いてきた。そのときに、ひもじい思いをした経験が、彼女のなかに強烈な“飢え”を残したのだろう。
貧乏には戻りたくない。
誰にも見下されたくない。
絶対に負けたくない──。
だから、細木数子は誰かに救われるのを待つのではなく、自分で運命をこじ開けようとする。その姿は、ときに恐ろしいほどの執念を感じさせる。
もっと上を目指したいと思ったとき。ひたむきに努力をするか。怒りを原動力に、使えるものはすべて使って、のし上がっていくか。朝ドラヒロインと細木数子の違いは、そこだけなのかもしれない。だからこそ、『地獄に堕ちるわよ』には、どこか朝ドラ的な面白さがあるのである。


