2026年で60周年を迎える「東映魔女っ子シリーズ」は、1966年放送の『魔法使いサリー』を皮切りに、断続的ではあるものの15年にも渡って放送された人気シリーズだ。
その名の通り、東映アニメーション(旧・東映動画)が製作した“魔法使いの女の子”を主人公とする作品を指すが、人間離れした力を秘めた女の子が主人公の『さるとびエッちゃん』や、サイボーグ少女が主人公の『ミラクル少女リミットちゃん』なども解釈によっては同シリーズに含まれる場合がある。
いずれにせよ、東映魔女っ子シリーズの主人公である彼女たちは、人々に夢と希望を与えながら愛を学ぶ、昭和の少女たちにとって憧れの存在だった。
しかし同シリーズの中には、子ども向けのアニメとは思えないほど、人間の悪意や身勝手さを冷徹に描いたエピソードも存在する。そこで今回は、魔法を使う少女たちの作品に絞り、魔法の力があってもどうにもならなかった、「人間が怖すぎる」エピソードを紹介したい。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■異文化の壁を乗り越えようとする少女を襲った人間の悪意…(魔法使いサリー)
1966年放送の『魔法使いサリー』は、日本初の少女向けテレビアニメとして知られている。横山光輝氏が少女漫画誌『りぼん』(集英社)で連載していた作品が原作で、アニメ全109話のうち最初の数話のみモノクロで製作された。また、1989年に続編が放送されたため、前作が「第1期・昭和版」、続編は「第2期・平成版」とも呼ばれている。
そんな第1期で、子ども心にもショックを受けたのが、名作としても名高い第60話「ポニーの花園」だ。
魔法の国の王女でありながら、人間界で小学5年生として暮らす夢野サリー。ある日、サリーのクラスにインド系の特徴を持つ少女・ポニーが転校してくる。文化の違いもあって、なかなか周囲になじめずにいたポニーは、みんなのために学校の花壇に菊の種を植えた。
ところが、そのポニーが種を植えた花壇を、クラスの悪ガキに踏み荒らされてしまう。その行為にサリーは怒るが、ポニーは彼女をなだめ、健気にも再び荒れた花壇を直すのだった。
しかし嵐の日、花壇を心配して学校へ向かったサリーは、激しい雨の中で立ち尽くすポニーを目の当たりにする。彼女が育てていた花壇はまたも無残に破壊され、土には「バカ」という文字まで書かれていたのである。
子どもがやったこととはいえ、孤立する少女が大切に育てていた花壇を執拗に破壊するという残酷な行為に、怒りを覚えた視聴者も多かったのではないだろうか。
びしょ濡れになりながら土をかき集めようとするポニーだったが、突然苦しみながら倒れてしまう。
実は生まれつきポニーは心臓が悪く、手術の成功率は50%。彼女は病院のベッドでも「菊、菊の花……」とうわ言を繰り返していた。
その思いを汲んで学校に戻ったサリーは、花壇の中に小さな菊の芽を見つける。その奇跡が彼女にも通じたのか、ポニーの手術は無事に成功した。
入院中のポニーに代わり、サリーたちが花壇の世話をしていると、次第に手伝う生徒の輪が広がっていく。その中には、かつてポニーをいじめていた悪ガキの姿もあり、退院したポニーが登校すると、そこには美しい花壇と、彼女を大歓声で迎える大勢の“友だち”がいた……というハッピーエンドに終わる。
雨の中、無残な有様の花壇を見つめるポニーの切ない後ろ姿は、大人になった今も忘れられず、この話を思い出すたびに胸が締めつけられるような気持ちになる。


