今も昔も多くのファンの心をつかんで離さない少女漫画雑誌『りぼん』(集英社)。おもに小中学生をターゲットとしながらも、少し背伸びした恋愛模様や、思わず笑みがこぼれるギャグ漫画など、読者を飽きさせない多彩な名作がそろっている。
そんな『りぼん』を代表する人気漫画家の中には、時として読者をグッと引き込むミステリー作品を放ち、ファンを驚かせた者もいる。ふだんの作風とはガラリと異なるこれらの作品は、少女漫画の枠を超えた、読み応えのある仕上がりとなっていた。
そこで今回は、『りぼん』が誇る超有名漫画家が手がけた「珠玉のミステリー作品」を、厳選して紹介しよう。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■生きている人間剥製とは? 手に汗握るミステリー『パートナー』小花美穂
小花美穂氏は、『こどものおもちゃ』や『Honey Bitter』など数々の名作を世に送り出した漫画家である。
1999年から2000年にかけて連載された『パートナー』は、そんな小花氏の作品の中でも特に印象的なミステリー作品だ。
一卵性双生児の主人公・桜沢苗が、双子の妹・萌の死をきっかけに、非日常的な世界へと巻き込まれていく本作。物語序盤から、亡くなったはずの萌が買い物をしている姿を目撃するという不気味な場面が描かれ、読者を一気に惹きつける。
本作の核心、それは「生きている人間剥製」の存在だ。医学博士・東条光臣の知識と技術を詰め込んで作られた彼らは「L・S・P」と呼ばれ、卓越した医療技術によって遺体に手が加えられ、再び命を吹き込まれたものである。
頭部に埋め込まれた人工知能により、自らの意志で行動することもできる「L・S・P」。失ったはずの大切な人が再び動き、笑い、話す姿を目の当たりにして、静かに心を壊していくキャラクターたち。そういった人間描写はまさに小花氏の真骨頂であり、繊細で美しく、そして悲しさに満ちている。
本作はミステリーを主軸にしながらも、小花作品らしいコミカルな要素も随所にちりばめられているのも特徴。シリアス展開の合間に挟まれるギャグパートが心地よく、読み進める手が止まらなくなってしまう。
その物語は終盤に差し掛かるにつれてスケールを増していき、クライマックスの手に汗握る展開は、少女漫画というジャンルを忘れさせるほどの迫力があった。双子の姉妹の行く末を、ぜひその目で確認してほしい。
■時を超えた幻想的なラブストーリー『下弦の月』矢沢あい
『天使なんかじゃない』や『NANAーナナー』で知られる矢沢あい氏もまた、珠玉のミステリー作品を手がけている。
1998年から1999年にかけて連載された『下弦の月』は、“月の周期”が物語の重要な鍵を握る作品だ。
満月の夜、運命に導かれるように出会った主人公の望月美月と、謎の男性アダム・ラング。美しくもどこか悲しげなアダムに惹かれていく美月は、彼との駆け落ちを決意する。しかし、アダムとの約束の夜に美月は事故に遭い、そのまま昏睡状態に陥ってしまうのだ。
複雑な家庭環境で育ち、心に寂しさを抱える美月。彼女が、同じように大切な人を失った痛みを持つアダムに強く惹かれていく姿は、儚くも美しかった。
そして2人の運命的な恋は、19年前に亡くなったアダムのかつての恋人・上條さやかの存在が明かされることで悲しい真実の姿を現していくのである。
さらに、もう1人のヒロインである小学生・白石蛍の視点が加わることで、物語は“謎に迫るミステリー”としての本質を強めていく。アダムとさやかの過去が明かされた時、美月はどのような道を選ぶのか——当時、ドキドキしながら見守ったその結末は、矢沢作品ならではの深い余韻を残すものだった。
矢沢氏による圧巻の作画が、作品全体の幻想的な雰囲気を一層引き立てている本作。ちりばめられた伏線がつながっていくストーリー展開も見事で、ミステリーとラブストーリーが融合した、非常に読み応えのある作品である。


