■りんたろう、川尻善昭、大友克洋…神クリエイターがしのぎを削った短編オムニバス『迷宮物語』
最後に挙げるのは、1987年にビデオが発売され、1989年に劇場公開された『迷宮物語』。眉村卓さんの短編小説を原作に、りんたろうさん、川尻善昭さん、大友克洋さんといった日本アニメ史に名を残した気鋭のクリエイターたちが競作したオムニバス作品です。
第1話『ラビリンス*ラビリントス』(りんたろう監督)は、幻想的な迷宮世界を描いたオリジナル作品。地の底から湧き出るような水の音にエリック・サティの『ジムノペディ』の旋律が重なり、猫を真似る少女・さち(声:吉田日出子さん)の声や顔の見えない母親の存在など、不安をあおる要素がちりばめられています。
時計の振り子や風で開く窓など、ドキッとさせられる描写が多く、映像表現の巧みさが光ります。ぜひ大きな画面で見ることをオススメしたい作品です。
第2話『走る男』(川尻監督)では、カーレースに命を削り、壊れていく男ザック・ヒュー(声:銀河万丈さん)の姿を、記者ボブ・ストーン(声:津嘉山正種さん)の語りとともに描いています。
スピードに憑りつかれたザックに呼応するかのようにマシンは崩壊し、他車を巻き込む大惨事へ……。ザックが発するうめき声が、重圧と息苦しさを生々しく伝えます。
第3話『工事中止命令』は、大友克洋さんのアニメ監督デビュー作。ジャングルの奥地で進行中だった“無駄な”工事の中止命令を遂行するため、派遣された社員・杉岡勉(水島裕さん)が主人公。過酷な環境下ですべての作業をロボットが担っていますが、迎えに出た管理ロボットの様子はどこか不穏……というディストピア作品です。
緻密なメカニック描写と皮肉の効いた演出は、のちの『AKIRA』(1988年)へとつながる圧倒的な熱量が感じられ、芸術的にも見える映像表現が目を引きます。
管理ロボットが壊れていくにつれ、杉岡に出される食事がどんどんおかしな内容になっていく不気味さや、現場を知らず無理な命令を下す会社への皮肉など、さまざまなメッセージが込められていました。
そんな短編オムニバス『迷宮物語』は、当時のクリエイターたちの熱量や執念が画面越しに伝わってきそうな、先鋭的なセンスがあふれる作品ばかりでした。
角川映画だけでなく昭和のアニメ作品には、当時若手だったクリエイターたちの熱量や勢いが伝わってくるような意欲作がたくさんありました。一部、今では視聴が難しい作品も存在しますが、当時の映画館に足を運ばなかった人や、最近のアニメに物足りなさを感じている人は、あえてこういった刺激的な作品を振り返ってみるのも一興かもしれません。
1985年公開の角川アニメの原作小説をチェック



