一度は観ておきたい「脚本・宮藤官九郎」の隠れた名作ドラマ3選 朝ドラにも負けない「濃厚クドカンワールド」の画像
画像は日本テレビ公式サイトのドラマ『ぼくの魔法使い』ページより (C)NTV

 2028年度前期のNHK連続テレビ小説として、クドカンこと宮藤官九郎さんが脚本を担当する『ほんのモキチ』が放送されることが発表された。主演は『不適切にもほどがある!』(TBS系)でもタッグを組んだ河合優実さんで、宮藤さんは2013年の『あまちゃん』に続いて、約15年ぶり二度目の朝ドラ脚本となる。

 松尾スズキさん主宰の劇団「大人計画」に俳優として所属し、90年代から脚本・演出の面でも才能を発揮してきた宮藤さん。 その才能が全国区に知れ渡ったのが、2000年のドラマ『池袋ウエストゲートパーク』(TBS系)だろう。

 独創的な世界観やユーモアは一躍、「脚本家・クドカン」を時の人へと押し上げ、その後は映画『GO』、ドラマ『タイガー&ドラゴン』『木更津キャッツアイ』(ともにTBS系)、『あまちゃん』などヒットを連発。小気味いいテンポと畳みかけるような小ネタ、そして独特の構成美が若い世代を中心に熱狂的な支持を集めた。

 そんな誰もが知る大ヒット作を手掛ける一方で、ファンの間で根強く愛され続ける通好みな作品が多く存在するのも、クドカン脚本ドラマの奥深さだろう。今回は、数ある作品の中から一度は観ておきたい「クドカンの隠れた名作」をピックアップしてみたい。

※本記事には各作品の内容を含みます

■笑って泣ける“入れ替わり系”ラブコメ『ぼくの魔法使い』

 2003年4月から放送されていた『ぼくの魔法使い』(日本テレビ系)は、宮藤さんの作品の中でも個性が強い隠れた名作の一つだ。物語は、伊藤英明さん演じる町田道男と、篠原涼子さん演じる妻・留美子、そして古田新太さん演じる記憶術の大家・田町浩二が繰り広げるドタバタハイテンションラブコメである。

 道男と留美子は、お互いを“みったん・るみたん”と呼び合う超ラブラブな夫婦。日々熱烈な生活を送っていたある時、留美子は自転車で田町と正面衝突し、その日以来、“何かを思い出そうとする度に田町と体が入れ替わる”という、ある意味で恐ろしい体質になってしまう。

 甘えん坊で可愛らしい篠原さんが、ことあるごとにゴツい男に入れ変わる様子を見て、多くの人が「なんだこれは」と思わず笑ったことだろう。しかし、ずっと見ているうち、古田さんが女の子全開な留美子の言動そのままに泣いたり甘えたりする姿が1周回って可愛く思えてくるから、不思議である。

 また、主役たちの演技が振り切っているためかなりのインパクトだが、本作は脇を固める俳優たちも豪華。阿部サダヲさん、西村雅彦(現:まさ彦)さん、大倉孝二さんといった実力派が並ぶほか、井川遥さんや速水もこみちさんも本人役で出演している。

 一見したところひたすらコミカルに思える本作だが、ただおバカなだけではなく夫婦の絆や愛も感動的に描かれる。頭を空っぽにして笑えるのに心がほっこりする、そのギャップがまた視聴者の心を鷲掴みにする作品だ。

■純喫茶で繰り広げられる恋の連鎖『マンハッタンラブストーリー』

 宮藤さんが初めて挑んだ本格的なラブストーリー、それが2003年10月から放送されていた『マンハッタンラブストーリー』(TBS系)だ。ラブストーリーとは言っても一般的な恋物語とはひと味違い、複雑怪奇な恋の相関図と随所に散りばめられた笑いと涙で、濃密な“クドカンワールド”を堪能できる一作となっている。

 物語の舞台は、松岡昌宏さん演じる店長が切り盛りする純喫茶「マンハッタン」。彼はほぼ喋らず愛想もないが、実は誰より客のことを見ており、心の中では客へのツッコミをしているような不思議な男である。

 そんな店長のもとには、小泉今日子さん演じる赤羽伸子(A)や及川光博さん演じる別所秀樹(B)をはじめ、個性豊かな面々が集う。そして、イニシャルAからGまでに当てはめられた彼らが、A→B→C→Dと恋のリレーを展開していく。

 客の恋愛事情を見守る店長は、度々「私の経験と人生と魂を込めて言わせてもらう」のセリフとともに彼らに気づきを与える。が、恋の連鎖は思わぬ方向へと転がり、店長(H)もまたその渦の中に巻き込まれるのだ。

 登場人物が全員誰かに恋をしているという設定だけでも面白いのだが、パズルのような多角関係が笑いと切なさを織り交ぜながら描かれ、意外な展開へとつながっていく。この手腕こそ、宮藤さんの真骨頂といえるだろう。

 「マンハッタン」でハイテンポに展開していく恋の物語は、放送から20年以上が経った今なお、隠れた名作としてファンの間で語り継がれている。

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