■出生の秘密に翻弄される…どん底に落ちた“気高き令嬢”の光と影『乳姉妹』
1985年放送の『乳姉妹』は、大映ドラマのお家芸ともいえる“出生の秘密”と“血の系譜”を真正面から描いた作品である。伊藤さんは本作で、過酷な運命に翻弄されるヒロイン・大丸千鶴子を演じている。
千鶴子は大財閥の娘として何不自由なく育った。だが、実は貧しい家庭の娘・松本しのぶ(渡辺桂子さん)と赤ん坊のころに取り違えられていたのである。
18歳までは全く違う生活を送りながら平穏に暮らしていた2人だが、蒸発していたしのぶの父親が戻ってきたことから波乱が巻き起こる。本作で伊藤さんは、恵まれた環境から一転、過酷な運命を知った衝撃や愛を渇望する少女を力強く表現した。
また、千鶴子の相手役である暴走族の元総長・田辺路男を演じたのは、同じく大映ドラマの大スターである松村雄基さんだ。路男は暴走族の解散後はトランぺッターとして活躍するのだが、悪性腫瘍で片腕の切断を余儀なくされる試練に見舞われる。最終話で、千鶴子が路男の失われた腕の代わりとなってトランペットを支えるシーンは、多くの視聴者の涙を誘った。
運命に抗いながらも気高さを失わなかった千鶴子。ストーリー自体は波乱万丈そのものであるが、伊藤さんの説得力のある演技によって視聴者はドラマの世界に没頭することができた。本作が、大映ドラマを代表する名作の1つとして今なお語り継がれているのは、彼女の功績も大きいだろう。
昭和の時代、テレビに伊藤かずえさんが映っていると「またドロドロしたドラマが始まる!」と感じたことを思い出す。彼女はまさに大映ドラマの顔であり、ドラマ特有の過剰なまでのエネルギーを見事に体現してくれた。
時代を超えても色褪せない大映ドラマの魅力は、女優・伊藤かずえの圧倒的な演技力と、役柄ごとに全く違う顔を見せる“七変化”の魅力なしには語れないだろう。
■伊藤かずえさんも出演! 懐かしの『スクール☆ウォーズ~泣き虫先生の7年戦争~』をチェック



