昭和の大映ドラマで「伊藤かずえ」が魅せた“圧巻七変化” 『ポニーテールはふり向かない』ロック少女から『花嫁衣裳は誰が着る』極悪お嬢様までの画像
『ポニーテールはふり向かない』大映テレビ/TBS(TBSチャンネル公式サイトより)

 昭和の時代を中心に、過激なセリフや予測不可能な愛憎劇でお茶の間を熱狂させた「大映ドラマ」。その黄金期を牽引した女優といえば、伊藤かずえさんの名を挙げないわけにはいかないだろう。

 伊藤さんは美しいヒロインとして活躍しただけでなく、作品ごとに見せる役柄の振り幅も圧巻だった。ある時はドラムスティックを振り回す不良少女、またある時はヒロインを徹底的にいびる極悪令嬢など、同一人物とは思えないほどの“七変化”ぶりで視聴者を魅了した。

 今回は、伊藤さんが大映ドラマで見せた圧倒的な表現力と、彼女が演じた伝説のキャラクターたちを振り返りたい。

※本記事には各作品の内容を含みます

■武器はドラムスティック! 魂の不良ドラマーを熱演した『ポニーテールはふり向かない』

 伊藤かずえさんが初めて大映ドラマで主役を演じたのが、1985年から放送された『ポニーテールはふり向かない』である。

 彼女が演じた主人公・ミッキーこと麻生未記は、ジャズドラマーの父に育てられたものの、喧嘩が原因で女子少年院に送られた不良少女だ。出所後、故郷の横須賀に戻ってきた彼女は、荒んだ心を抱えながらも亡き父が残したドラムスティックを手に、ロックバンドでの成功を目指す。

 本作は複雑な生い立ちや過去を持つ若者たちが、悩み苦しみながらも音楽を通して心を一つにしていくという熱い青春ストーリーである。伊藤さんが感情をむき出しにしてドラムを叩く姿や、不良たちと鋭い眼差しで渡り合う姿は、当時の若者たちに強烈なインパクトを与えた。

 この作品で“伊藤かずえ=かっこいい不良少女”というイメージが定着したといえるだろう。未記を演じるにあたって、伊藤さんは練習を重ねてドラム演奏を自らこなしたという。そのリズミカルな動きや、迫力満点の喧嘩シーンは本作の大きな見どころである。

 そして『ポニーテールはふり向かない』の熱血ヒロインから一転、視聴者の憎悪を集めた冷酷な悪役へと変貌を遂げたのが、1986年放送の『花嫁衣裳は誰が着る』である。

 本作で伊藤さんが演じたのは、ホテル「きらくホテル」の当主の一人娘で、何不自由なく育てられたプライドの高い令嬢・相良みさ子である。

 みさ子は、父親が誰だか分からぬままホテルに引き取られたヒロイン・雪村千代(堀ちえみさん)に対し、激しい敵意をむき出しにして使用人同然にこき使う。自身の誕生日パーティーで披露した美しいドレス姿とは裏腹に、鋭い視線と毒舌で千代を追い詰める姿は圧巻だった。

 その背景には、幼い日の事故で千代に怪我を負わされたという過去があるものの、みさ子が徹底的に千代をいびり抜く姿はまさに“いじめ役のプロ”という印象を植え付けた。

 また、か弱くうるうるした瞳が印象的な堀さんの千代とは対照的に、伊藤さん演じるみさ子は目力が強く、眼光も鋭かった。この目で睨まれてしまうと、千代でなくてもたじろいでしまうだろう。

 本作における伊藤さんは、ヒロインの悲劇性を最大限に際立たせる起爆剤となっていた。

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