『鬼滅の刃』実は物語の“重要な転換点”を担っていた「名もなき一般人」“禿の少女”に“蜜璃の見合い相手”、“無限列車の乗客たち”も…の画像
『テレビアニメ「鬼滅の刃」シリーズ全編再放送』キービジュアル (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 吾峠呼世晴氏による漫画『鬼滅の刃』は、人を喰らう鬼と人間との壮絶な戦いを描いた物語だ。今や世界中で人気を博している本作は、アニメ版も高い注目を集め、劇場版は日本国内の歴代興行収入ランキングで1位と2位を独占するなど、映画史に名を残す記録を打ち立てている。

 本作では主要人物を含め、印象的なキャラクターが多く登場するが、中には“名もなき一般人”が物語の重要な転換点を作り出すこともあった。特に、浅草で鬼舞辻無惨によって鬼に変えられた青年は、「柱稽古編」のクライマックスで、自身の血鬼術によって無惨を足止めするという大役を果たした。彼の尽力がなければ、柱が集結するまでの時間稼ぎは難しかったかもしれない。

 そこで今回はこの浅草の青年のように、物語で実は重要な役割を担っていた“名もなき一般人”たちを紹介したい。

 

※本記事には作品の内容を含みます。

 

■臆病な善逸を奮い立たせた…「遊郭編」禿の少女

 主人公・竈門炭治郎の同期の鬼殺隊士・我妻善逸はとても臆病な性格で、戦いにはいつも消極的なキャラクターだ。そんな彼の意識を変えるきっかけとなったのが、「遊郭編」に登場した禿(かむろ)の少女である。

 名もなきこの少女は、上弦の陸・堕姫が化けていた“蕨姫花魁”に仕える禿だった。気性が荒く乱暴な蕨姫花魁に痛めつけられて泣いていたところ、その泣き声を聞いた善逸に助けられる。

 蕨姫花魁が乱暴に禿の耳をつかみ引っ張り上げた時、善逸が割って入り、その腕をつかんで制止した。善逸は優れた聴覚により、蕨姫花魁が鬼であること、さらには彼女が上弦の鬼であることまで見抜いていた。自分も恐怖に震え上がりながらも鬼に立ち向かった善逸は、その後、吹き飛ばされて失神してしまう。

 しかし、かつて任務に向かうだけで泣き叫んでいた善逸の姿は、そこにはなかった。後に堕姫が姿を現し、兄・妓夫太郎との戦いに発展した際、嘴平伊之助とともに駆けつけた善逸が、堕姫に「耳を引っ張って怪我をさせた子に謝れ」と言い放つシーンにしびれたのは筆者だけではないだろう。

 痛めつけられる禿を見て覚醒した善逸は、伊之助すら驚くほどの戦闘能力を発揮した。臆病な善逸の闘争心に火をつけたこの少女は、間違いなく重要な“名もなき一般人”の1人といえる。

■伊之助に人の温かさを教えた「藤の花の家紋の家」の老婆

 赤ん坊の頃に捨てられ、猪に育てられた異色の経歴を持つ伊之助。彼は獣とともに育った影響からか、野生的で粗暴な一面が目立っていた。当初は炭治郎や善逸に対しても、どこか壁があるような印象だった。

 そんな伊之助の心を溶かしたのが、「藤の花の家紋の家」で暮らす老婆だ。鼓屋敷での戦闘を終え、怪我をしていた3人は次の任務の前にこの家で世話になっていた。

 実はかつて鬼殺隊に救われた有志たちが、「藤の花の家紋」を掲げ、鬼殺隊の隊士たちの支援を行っているのだ。このとき3人が立ち寄った家には小柄で穏やかな老婆が住んでおり、彼らに衣食住と、医療も提供し、至れり尽くせりの待遇だった。

 汚れた伊之助の服を洗い、彼が前日に喜んで食べていた天ぷらを夕飯に用意するなど、老婆の優しい心遣いに触れた伊之助は、「ほわ ほわ」と温かい気持ちで満たされていく。

 老婆の優しさは、弱肉強食の山で育った伊之助の心を溶かしていった。こうして少しずつ伊之助は炭治郎や善逸、鬼殺隊の仲間たちに心を開いていくことになる。

 伊之助に人の温かさを教えてくれた彼女もまた、物語において大きな役割を果たしていた。

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