2026年4月5日から、フジテレビ系にて全編再放送が始まったテレビアニメ『鬼滅の刃』シリーズ(毎週日曜朝9時30分放送開始)。日曜の朝から『鬼滅』のアニメをもう一度リアルタイムで楽しんでいるという人は多く、毎回放送のたびにSNSが賑わっている。
『鬼滅の刃』は心優しき少年・竈門炭治郎が、鬼にされてしまった妹の禰󠄀豆子を人間に戻すため、鬼殺隊に入って鬼と戦う物語だ。基本的には厳しい修行や鬼との死闘、仲間との交流が描かれており、ストーリーが進むごとにその戦いは苛烈なものへとなっていく。
そんな本作のメインストーリー以外の魅力の1つが、“食事シーン”だ。人間しか食べない鬼とは異なり、人間と食事は切っても切れないものであり、心なしか料理シーンの作画には製作陣の気合も感じられる。
今回はその中でも、主要な登場人物たちに影響を与えた特別な食事と、そのありがたみを振り返ってみたい。
※本記事には作品の内容を含みます。
■炭治郎を複雑な気持ちで送り出した、鱗滝のご馳走
最初に紹介するのは、「竈門炭治郎 立志編」第四話「最終選別」で、師である鱗滝左近次が炭治郎に振る舞った夕食である。
「岩を斬る」という無理難題を約半年かけて成し遂げた炭治郎に対し、鱗滝は「よく頑張った。炭治郎、お前はすごい子だ」と労いの言葉をかける。その夜の食卓には、串刺しにした川魚の塩焼きと、野菜もたっぷり入ったすき焼きのような鍋料理が並んだ。食卓を囲むのは2人なのに、川魚の串焼きは7本も用意されており、そのうち4本が炭治郎の方に並べられていた。
あまり裕福ではなく、兄弟も多かった炭治郎にとっては滅多に見ない豪華な食事だったのだろう。「どうしたんですか、こんなに」と驚く姿や「あんなご馳走久しぶりでした」という発言から、この食事がどれほど彼にとって特別なものに映ったかがうかがえる。
「すべての修行を終えた祝いだ。遠慮せず、食うといい」と炭治郎を見守る鱗滝の姿は、師匠でありながら保護者のようでもあった。炭治郎が向かおうとしている最終選別は命がけであり、これが2人の最後の別れになる可能性もありえた。お面をつけているため表情は見えなかったが、鱗滝の佇まいからは、炭治郎を信じつつ、どこか寂しさを感じているように思えた。
「今だけはゆっくり休むといい」とモノローグで語る鱗滝の優しさは、人の気持ちを察することができる炭治郎にも伝わっていたはずだ。これから始まる長く厳しい戦いの日々の前の、最後のほっと一息つける時間だったのだろう。
■野生児・伊之助の心に灯をともした天ぷら
続いては、「竈門炭治郎 立志編」第十四話「藤の花の家紋の家」に出てきた、藤の花の家紋の家のおばあさん・ひさが作った天ぷら。嘴平伊之助の心を初めて動かし、以降の展開にもたびたび登場する重要アイテムである。
鼓屋敷での戦闘を終えた炭治郎・我妻善逸・伊之助が休息のために向かったのは、鬼殺隊に無償で尽くし、 食事や寝床を用意したり治療をしてくれたりする「藤の花の家紋の家」だった。そこで提供されたのは、山盛りのご飯と煮物、味噌汁、そして天ぷら。育ち盛りの男の子にはたまらないメニューだ。
天ぷらにはエビ、ナス、カボチャ、レンコンに春菊やシシトウのようなものまであり、大根おろしとショウガが添えられている。アニメでは衣の細かい部分まで丁寧に描かれ、製作陣の作画に対するこだわりが感じられた。
伊之助はすべての料理を手づかみで雑に食べていたが、この時の天ぷらを思い出すと「ほわほわ」とあたたかい気持ちになるようになった。後の「柱稽古編」で、岩柱による厳しい稽古の際にも、天ぷらを思い浮かべて自身を鼓舞していたほどだ。
単純に美味しかったのもあるだろうが、伊之助が物心ついてから初めて触れた「人の優しさ」を象徴するのが、この天ぷらなのだろう。以降、天ぷらは彼の大好物になった。


