■無惨が探し求める「青い彼岸花」の謎

 鬼の始祖・無惨が千年以上もの間探し求める「青い彼岸花」は、物語の根幹に関わる重要アイテムである。

 もとは平安時代、病弱だった無惨を治療する薬の材料だった。しかし、治療の遅さに苛立った無惨が医者を殺害したため、薬は未完成に終わる。その後、無惨は初めてその薬が効いていたことに気づくのだ。

 無惨の体は強靭なものへと変化したが、その代償として太陽の下を歩けなくなってしまった。人の血肉を欲するようになったことは些細な問題であったが、太陽という弱点ができたことが許せなかった。

 完全な存在となるため、それから千年にわたって無惨は薬の材料「青い彼岸花」を探し続けることとなる。だが、配下の鬼たちを総動員しても、その在処を見つけることはできなかった。

 しかし、なぜ無惨はそれほど長い間「青い彼岸花」を見つけられなかったのだろうか。その謎は、『鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録・弐』で明かされた花の生態によって判明する。

 「青い彼岸花」は毎年咲くわけではなく、さらに昼間のわずかな時間しか咲かない幻の花だったのである。実は炭治郎の母・竈門葵枝は、この花の咲く場所を知っていたが、竈門家の6人の子どもの中では炭治郎だけが花を目にしたことがあった。この事実は、下弦の伍・累との戦いで炭治郎が見た走馬灯の中に、さりげなく描かれている。

 咲く場所を知る者でさえ開花に立ち会うのは極めて難しく、まして太陽の下を歩けない無惨が見つけ出すのは不可能に近かった。この皮肉な事実は物語の緻密な設定を際立たせ、見事な伏線回収として読者を唸らせた。

 

 今回紹介した以外にも、『鬼滅の刃』には数多くの巧妙な伏線が隠されている。こうして振り返ると、吾峠氏が仕掛ける天才的な伏線には驚かされてばかりだ。

 深く練り込まれたストーリーと、登場人物たちが織りなす人間ドラマこそ、本作が世代を超えて愛される理由であろう。原作で結末を知っていたとしても、何度も楽しめる『鬼滅の刃』。いよいよ描かれる劇場版「無限城編」、そして感動のクライマックスを心待ちにしたい。

 

■「ここだけの話」が解き明かされる…『鬼滅の刃公式ファンブック』をチェック
『鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録』(ジャンプコミックス)
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