尾田栄一郎氏が描く海洋冒険漫画『ONE PIECE(ワンピース)』(集英社)において、海のならず者たちから治安を守る警察的な組織が「海軍」だ。
海軍将校たちは己の掲げる「正義」に従い、凶悪な大海賊たちと対峙する。逆に読者の目線からすれば、海軍の存在は主人公のルフィたちにとって高いハードルであり、強力なライバルでもあった。
そんな世界政府直属の軍隊である海軍は、政府の思惑に従って動く場面もあり、時には理不尽で非情な行動に出る。また、海賊たちを取り締まる立場にありながら、重大な判断ミスや戦力の流出を招き、結果として海賊勢力の増長を許してきた側面も否定できない。
そこで本記事では、過去に海軍が犯してきた致命的な失態の数々を振り返ってみたい。
※本記事には作品の内容を含みます。
■悲劇の始まり? 「インペルダウンの大脱獄」
世界政府及び海軍史上、最大級の失態ともいえるのが、海底大監獄「インペルダウン」で発生した大量脱獄ではないだろうか。鉄壁の警備により「脱獄不可能」と謳われたインペルダウンには、伝説級の凶悪犯を含む、多数の罪人が収監されていた。
事の発端は、“黒ひげ”ことマーシャル・D・ティーチが、白ひげ海賊団の幹部であるポートガス・D・エースの身柄を海軍本部に引き渡したことから始まる。そして海軍は、エースをインペルダウンに投獄したのである。
その後、海軍による公開処刑が決まったエースは、海軍本部のあるマリンフォードへと移送される。そのため、エースを助けるためにインペルダウンに侵入した義弟のルフィと入れ違いになった。だが結果的にこの海軍の動きによって生じた隙が、インペルダウンでの世紀の失態を生むきっかけとなるのである。
王下七武海のハンコックの助力を得て、インペルダウンに乗り込んだルフィは、もっとも危険な重罪人が投獄された「LEVEL6」階層にいた元王下七武海ジンベエやクロコダイル、革命軍のイワンコフといった強力な囚人たちと手を組み、監獄内を大混乱に陥れた。
そこに何の偶然か、黒ひげ・ティーチまで海賊団を引き連れてインペルダウンに侵入。LEVEL6に収監された凶悪犯の中から仲間を選別して連れ去ったことで、世界最悪クラスの犯罪者たちが再び海へと解き放たれたのである。
脱獄した囚人の総数は200名以上……。海軍が長年かけて捕らえてきた危険人物たちが、たった一度の襲撃で大量逃亡した。この由々しき事態は、海軍や世界政府側の管理能力に対する重大な疑問を投げかけるものとなった。
■海軍のお膝元で出し抜かれ、みすみす悪魔の実を奪われる
前述したインペルダウン脱獄からつながるマリンフォード頂上戦争は、エースの公開処刑を阻止しようとする白ひげ海賊団、それに味方する海賊たちが、海軍と激突した歴史的決戦である。
海軍は当時の三大将を含む全戦力と王下七武海まで動員し、結果的に世界最強の海賊だった“白ひげ”エドワード・ニューゲートを倒し、エースの命を奪うことには成功する。だが、この戦いの中で、海軍は致命的な失態を犯してしまった。
その最大の失態は、“黒ひげ”ことマーシャル・D・ティーチに、「世界を滅ぼす力」と称されるグラグラの実の能力を奪われたこと。
インペルダウンを脱獄した凶悪犯を引き連れてマリンフォードに現れた黒ひげは、瀕死の白ひげにとどめを刺した後、何らかの方法でグラグラの実の能力を自身のものにした。
海軍の精鋭たちがそろっている目の前で、「ヤミヤミの実」と「グラグラの実」という2つの悪魔の実の能力を持つ史上初の人物が誕生したのである。
黒ひげのインペルダウンからの一連の動きを見る限り、そもそも海軍は彼の目的遂行のダシにされた可能性が考えられる。その上わざわざ海賊たちを刺激する、エースの公開処刑という手段を選んだ是非も問われるところだ。
エースと白ひげが命を落とし、白ひげ海賊団は事実上壊滅するという成果は出したものの、そのかわりに黒ひげやルフィという海軍にとっての新たな脅威を生み出したことになる。後に四皇となる黒ひげに大きな力を与え、ルフィを取り逃がしたことは、やはり失態と言わざるを得ない。


