『SPY×FAMILY』、『チェンソーマン』、『ダンダダン』などの大ヒット漫画編集者・林士平さんがパーソナリティを務めるポッドキャスト番組『林士平のイナズマフラッシュ』の対談が1冊の本になった。俳優、脚本家、ドラマプロデューサーなど、多彩なゲストを招き、もの作りにまつわるトークを展開した『9人の「超個性」プロの新仕事論』。もの作りのトッププランナーたちが言葉で交わる瞬間をまとめた本書の魅力や、林さんが思うクリエイターとしての大事にしていることなど、たっぷりとうかがった。
――林士平さんの新著『9人の「超個性」プロの新仕事論』には、さまざまな対談の中で示唆に富む言葉が数多く登場します。例えば、脚本家・野木亜紀子さんとの対談では、「ベタを知ることの重要性」についても語られています。
林 定番の展開やお約束を知り尽くした上じゃないと、新しいものもわからないと思うので、やはりベタは大事ですよね。どうしてベタが生まれたのかというと、多くの人が反応するから、たくさん人が使うからってこと。そこに秘密があると思うんですよね。間違いなく、知っておくべきだと思いますね。
――ドラマプロデューサーの佐野亜裕美さんとの対談で語られた「週刊連載だとどんなに作り込んだキャラクターでも作家さんの素にどんどん寄ってくる」というお話も印象的でした。
林 主人公や登場人物は、比較的その作家さんの欠片みたいなものを持っていることが多いと思います。ただ、もちろん自分とキャラクターを完全に別物として作る方もいらっしゃいますが、目指してるものは作家さんの美学に近いことが多いなという印象はありますね。
――そして、そのキャラクターが作家さんに寄って行ったとき、基本的にはその作家さんのスタンスに寄り添われつつ、でも「キャラクターからはみ出してるぞ」というときは作家さんに伝えるというのも対談の中で語られていました。
林 そこはとにかく、面白いかどうかですよね。作家さんが「面白い」「描きたい」と思って描いたものを僕が見て、実際に面白ければ、何も言うことはない場合もあります。ただ、面白くないとか、意味がよくわからないと感じたときは、確認します。「これ、どういうことですか?」って。
――今回の本の巻末には、ポッドキャスト番組『イナズマフラッシュ』のプロデューサー・石井玄さんとの対談も、総まとめとして掲載され、この中ではAIの話題にも触れられていました。感性やその伝え方について、いずれAIがその人間の機微のようなものを獲得し、クリアしてくる可能性もあるものの、現時点では、言語化できない「感性」や「身体性」においては、人間が生身で担うことに優位性がある、というお話をされていて……。
林 でも「今のところ」ですよね。わかんないですよね。生身が持っている感覚すらもコピーし始めたらもうわかんないなって。でも、いつかはできるんじゃないの? っていう気もするから、何とも言えないですよね。
――ただ、現在という意味では、人間の「感性」や「身体性」の大事さはあるという。
林 特に漫画の絵の場合、人間の身体性と紐づいているから、そこは大事だって思うんですけど、でもそれすらもうわかんないですけどね。ただ、今のところは人間を信じてないといけない気がするんですよね。
――では最後になりますが、この本を楽しみにされている方に、どんな部分を感じ取ってもらいたいかお聞かせください。
林 それぞれの読み方で自由に(笑)。9人のゲストの方々とそれぞれ、様々なことを語っているので、響くところがあれば拾っていただいて、皆さんにとって何かの刺激になれば、と思います。
――さまざまなジャンルの方が登場するので、例えばあまりドラマを見ない方は、野木さんの作品をご存じないかもしれません。それでも、読んでみると「なるほど」と思えるような発見は、きっとあるはずですよね。
林 でも、もし野木さんドラマ見たことないって方がいたら「今すぐ見てください!」と思うし、今から見られるなんて幸せですねと思います。
――1から楽しめる。
林 そうです。いいなぁって思います。僕も全部記憶を消してから、何も知らない状態で1から『アンナチュラル』とか、一気見したいですもん(笑)。でも「そのジャンルは詳しくない」とか「見たことない」という方でも、それぞれのジャンルの一線で活躍する方々のお話から感じ取っていただける部分があると思います。読んでいただいて、響く部分があったら嬉しいです。
【プロフィール】
林士平(りん・しへい)
漫画編集者、ミックスグリーン代表取締役。現在の担当作品は『SPY×FAMILY』『チェンソーマン』『ダンダダン』『ケントゥリア』『野球・文明・エイリアン』『こころの一番暗い部屋』『WITCHRIV』。過去の立ち上げ作品は『青の祓魔師』『この音とまれ!』『ファイアパンチ』『怪物事変』『左ききのエレン』『地獄楽』『カッコカワイイ宣言!』『ルックバック』『さよなら絵梨』他多数。また、アニメ・舞台・イベントの監修も手掛けている。
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