■自らを犠牲にする覚悟

 南の勇者とフリーレンが出会ったのは、彼女がヒンメルたちと出会う前のことだ。そこで彼は自分の能力やフリーレンの未来について語った。同時に、自分がシュラハトと七崩賢に討たれて死亡する運命も……。

 未来予知の能力を持つ彼は、当然ながら自分がどんな末路を迎えるかを理解していた。しかし、その未来を回避しようとせず、強敵に真っ向から挑んだ。

 南の勇者がその選択をした背景には、ヒンメルの存在がある。彼は「1人の若い勇者」が世界を救う未来を予知しており、だからこそ彼のための道を切り開こうと考えた。

 南の勇者は世界を救うのが自分ではないという事実に対し、「実に不本意」と話しているが、その顔には穏やかな笑みが浮かんでいた。たとえその功績が自分のものにならなくとも、世界が救われればそれでいいという思いが伝わってくる。

 南の勇者の最も偉大なところは、卓越した未来予知能力でも剣技でもない。この「自身を犠牲にしてでも世界を救う覚悟」だったのではないだろうか。彼が自身に訪れる運命から逃げず、道を切り開いたからこそ、ヒンメルたちは魔王討伐を成し遂げ、世界に平和をもたらすことができたのである。

 

 こうして振り返ってみると、南の勇者は、魔王を倒した勇者ヒンメルに勝るとも劣らない、あるいはそれ以上の実力者であった可能性が高い。それだけ圧倒的な強さを誇りながら、人類の未来のために己の命をかけた生きざまを知ると、“強さ”とは何なのかをあらためて考えさせられてしまう。

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