■愛憎渦巻く因縁と、おどろおどろしい演出がもたらした恐怖

 本作を語る上で欠かせないのが、主人公のえり子を置き去りにするほど濃すぎる周囲のキャラクターと、子ども向けアニメの枠を超越した過剰なほどの演出です。

 特にえり子や麗たちの「親世代」のドロドロとした確執は、もはや懐かしの昼メロのような領域。芸能界のライバルである麗の母・朝霧良子は、かつてえり子の父・雄介を愛していたが、えり子の母・美奈子に奪われたことへの憎悪は凄まじく、娘のえり子をつぶすために項介と結託。わざわざ新人男性歌手・大沢洋を見出して、彼女にぶつけるほどの執念を燃やします。

 さらに、良子の言動は芝居がかったキメゼリフが多く、印象に残ります。えり子が出演した歌番組の生放送中に「ベストテン入りおめでとう。でもあなたは太陽(新人の大沢)の前の“お月さま”として沈んでいくだけよ」と言い放ち、不仲な実の娘・麗に対しても「相変わらず愛に飢えているわね」などと他人事のように突き放す“悪女キャラ”を貫きました。

 ちなみに、そんな朝霧良子役を熱演したのは、ガンダム作品のハマーン・カーン役などでおなじみの榊原良子さんです。

 さらに本作最大の悪役である、えり子の伯父・項介のキャラクター造形も秀逸です。えり子の父・雄介に並々ならぬ劣等感を抱き、愛娘・えり子を破滅させようと犯罪まがいの策謀を実行。そして、とうとうえり子の母を監禁するという凶行にまで及びます。

 優秀な弟と比べられ続けた恨みに苛まれたあげく、金の力ですべてを解決しようとした結果、周囲から見限られてしまうのです。そんな項介役は、名優・飯塚昭三さんが熱演しました。

 また、視聴者は薄々気づいていましたが、物語終盤で項介が麗の実の父親であることが判明。えり子に対する攻撃性は弟に対する劣等感だけでなく、実の娘への浅はかな親心だと気づかされます。

 第37話では、えり子たちがニューヨークでの最終オーディションに挑んでいた際、項介は暴漢から娘の麗を守ろうとして撃たれ、危篤状態に。何も知らなかった麗は、項介が実の父親だと知ってショックを受けます。つまりえり子と麗は、血縁関係である従姉妹同士で争わされていたのです。

 その後の第40話にも衝撃的なシーンがありました。撃たれて昏睡状態の項介の脳内にはえり子と麗の映像と歌声が何度も繰り返し流れ込み、うなされます。そのサイケデリックな描写は、視聴者目線で恐ろしさを感じるほどでした。

 これらのドロドロとした人間模様を盛り上げたのが、昭和の作品でよく見られた「おどろおどろしい演出」です。衝撃的な事実が発覚すると黒い画面に激しい雷鳴が轟き、キャラクターのアップに集中線が突き刺さります。

 アニメ作品でありながら、まるで昭和の少女漫画のような演出が、複雑怪奇な人間関係をより一層恐ろしいものへと押し上げました。

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