大映ドラマをも超えるドロドロ展開…昭和アニメ『アイドル伝説えり子』過激演出で描いた「芸能界の闇」の画像
「アイドル伝説えり子 レジェンド Blu-ray BOX」(メディアファクトリー) (c)プロダクションリード・ビックウエスト

 1980年代のアニメには「新人アイドルにヒロインの歌唱を担当させ、作品とともに売り出す」という画期的な潮流が存在しました。

 その象徴が『超時空要塞マクロス』(1982年)のリン・ミンメイ役を演じた飯島真理さん、そして『魔法の天使クリィミーマミ』(1983年)でマミと森沢優役を熱演した太田貴子さんです。彼女たちは劇中の歌唱と現実の歌手活動を見事にリンクさせ、多くのアニメファンを熱狂させました。

 そして時代は昭和から平成へと移り変わる激動の1989年、突如現れたのが『アイドル伝説えり子』です。

 キラキラした世界でアイドルたちが躍動するアニメの系譜にありながら、ふたを開けてみると『アイドル伝説えり子』の物語は、夢と希望だけが満ちたシンプルなサクセスストーリーではありませんでした。

 『えり子』にあったのは、芸能界に渦巻く「ドロドロとした情念」や、命の危険すら感じるほどの「嫌がらせ」が飛び交う、昭和の大映ドラマも真っ青なほどの生々しい展開が描かれたのです。

 

※本記事には『アイドル伝説えり子』の核心部分の内容も含みます。

■芸能界はまさに戦場!? 大映ドラマ顔負けのトンデモ展開の数々

 本作を手がけたのは、『戦国魔神ゴーショーグン』や『魔法のプリンセス ミンキーモモ』などで知られるアニメ制作会社「葦プロダクション」です。

 物語は、大手芸能プロダクション「タムラプロ」の14歳の令嬢・田村えり子の両親が、突如交通事故に遭うという悲劇から幕を開けます。父は命を落とし、元歌手の母も昏睡状態に陥る中、伯父に家も会社も乗っ取られ、文字通り「どん底」に叩き落とされるのです。

 彼女は母の治療費を稼ぎ、生前の父の願いをかなえるためにアイドルとなり、過酷な芸能界へと身を投じます。そしてアイドル歌手・朝霧麗との熾烈なライバル関係と友情、そして命を狙われるほどの激しい妨害に抗いながら芸能界の頂点を目指す――まさに怒涛のサクセスストーリーでした。

 特筆すべきは、往年の「大映ドラマ」を彷彿させるトンデモ展開の連続です。

 大映ドラマといえば、『スチュワーデス物語』や『スクール☆ウォーズ』に代表される、仰々しいナレーションと少々やりすぎな展開、そしてヒロイン(主人公)を襲う波乱万丈かつ過酷な運命が特徴です。『えり子』で描かれた悪意の波状攻撃と、芸能界の裏側にある生々しい部分が赤裸々に描写され、本家ドラマに勝るとも劣らないトンデモ具合が魅力でした。

 ぶっ倒れるほど過酷なレッスン、デビューを阻もうとする執拗な妨害、それに追い打ちをかける母の容態急変……。さらに芸能活動に伴う中学の強制退学処分、男性アイドルとのスキャンダルの捏造、それに加えて悪意あるマスコミの報道や周囲から容赦ない敵意まで向けられ、14歳のえり子を容赦なく襲うのです。

 特に仕事を干され、落ち目となったえり子が地方で営業する描写。テレビで華々しいスポットライトを浴びるライバル・麗の姿を横目に、えり子は聴衆もまばらな繁華街で必死に歌います。その残酷なほどの格差は、見ていて胸が痛くなるほどリアルに感じられました。

 しかし、それでも元・社長令嬢とは思えないド根性で、えり子はめげずに立ち上がりますが、次から次へと苦難が……。アイドル水泳大会の仕事では、泳げないからと猛特訓しますが、本番で無理をしすぎてプールに沈み、間一髪で救助されます。

 伯父・項介の策略によって、ステージセットの車に何度もひかれかけ、オーディションと思いきや無人島でサバイバルさせられるなど、もはや「芸能活動」とは名ばかりの、命がけの戦場に叩き込まれるのです。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4