『北斗の拳』コソ泥少年・バットが“最高の漢”になるまでの軌跡を振り返るの画像
ゼノンコミックスDX『北斗の拳 究極版』第16巻(徳間書店)(C)武論尊・原哲夫

 1983年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載された、原作:武論尊氏、作画:原哲夫氏によるバトル漫画の金字塔『北斗の拳』。核戦争で荒廃した世紀末を舞台に、北斗神拳伝承者・ケンシロウの過酷な戦いを描いた本作は、当時の少年たちを夢中にさせた。

 その中で、物語の序盤からケンシロウの旅に同行し、彼の戦いを最も近くで見届けたのがコソ泥の少年・バットである。子どもの頃は単なるお調子者キャラといったイメージが強かったバットだが、物語が進むにつれて立派な青年へと成長し、やがて他者のためにその身を投げ出すことも厭わない「最高の漢」へと変貌を遂げるのだ。

 今回は、もはや本作の“もう1人の主人公“と言っても過言ではない、バットの胸熱な成長の軌跡を振り返ってみたい。

 

※本記事には作品の核心部分の内容を含みます。

 

■お調子者の少年が「北斗の軍」のリーダーへ…「天帝編」で見せた覚醒

 バットが初登場したのは物語の序盤。リンが暮らす村の牢屋でケンシロウと出会ったのが最初だ。ずる賢いバットはケンシロウの圧倒的な強さを知り、「あいつについていきゃ食いっぱぐれはあるまい」という打算的な理由から、彼と行動を共にし始める。

 旅の当初、バットは無償で人助けをするケンシロウの行動を理解できず、薄情な面を見せることもあった。しかもケンシロウの北斗神拳を目の当たりにした際には、恐怖のあまり失禁する場面もあったほどである。

 しかし、ケンシロウとの旅を通して、その生き様に触れるうちにバットの心境は徐々に変化。やがて、非力ながらも彼の力になりたいと強く願うようになっていく。

 ラオウとの死闘から数年後を描いた第2部「天帝編」で、バットは再登場する。そこに現れたのは、かつての面影を感じさせないほど精悍に鍛え上げられた青年の姿であり、「これがあの小さかったバットか!?」と、驚いた読者も少なくないだろう。

 成長したバットはリンと共に反帝都レジスタンス「北斗の軍」を率いる若きリーダーとして活躍していた。かつてコソ泥だった少年が、いまや圧政に苦しむ民衆のために戦う立派な闘士となっていたのである。

 こうして軍の先頭に立って指揮を執り、愛するリンや民衆を守るため、その身に無数の傷を刻んできたバット。再会を果たしたケンシロウから「男の顔になったな!!」とその成長を称えられた場面は、バットだけでなく、見ているこちらも胸が熱くなったものだ。

 ケンシロウが圧倒的な実力で悪を倒し民衆を救う救世主であるのに対し、バットは特別な力を持たなくとも、優れた指導力と熱い信念で人々をけん引した。そんな彼のエネルギッシュで頼もしい姿は、これからどのような旅が始まるのかと当時の読者に大きな期待を抱かせたのである。

■アインやファルコ…散っていった漢たちの遺志を継ぐ重圧と覚悟

 「天帝編」以降のバットは、ただ軍を率いるだけでなく、多くの戦友たちの「死」と「想い」を背負う過酷な立場に置かれる。その象徴ともいえるのが、賞金稼ぎのアインとのエピソードだ。

 当初こそケンシロウの首を狙う敵であったアインだが、バットは「好きな女のために時代を変えてやる」という自らの熱い決意を語り、彼を「北斗の軍」へと引き入れる。愛娘・アスカのために戦うアインにとって、バットの言葉は深く響いたのだ。

 そして、帝都の地下での死闘の末、アインは自らの命を犠牲にして落石からバットたちを救う。死の間際、アインはバットの腕の中でアスカの未来を託し、静かに息を引き取った。

 自分を庇って命を落とした友を前に、激しく慟哭したバット。彼はその後も、元斗皇拳のファルコをはじめとする戦士たちが、愛する者や時代のために散っていく様を見届けることとなる。

 彼らの遺志を継ぎ、荒廃した世界を進み続けなければならない重圧と孤独は計り知れない。しかも、ケンシロウのような特別な拳法を持たないバットは、自らの拳のみで泥臭く戦うしかないのだ。

 強敵を相手にする際はどれだけ不利な状況であっても、民衆のリーダーとしてバットは命をかけて戦いに身を投じ続けていくのである。

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