■池松壮亮演じる藤吉郎の「人を信じる力」
池松壮亮との掛け合いも抜群で、本物の兄弟のような自然な信頼関係が画面から伝わってくる。小一郎の魅力は、何と言っても「争いを避け、皆が納得する解決策を探す」姿勢だ。農民出身だからこそ、民の苦しみを肌で知っている。
戦場でも調略でも、暴力に頼らず知恵と調整力で切り抜ける姿は我々現代人の感覚にも似ている。兄の暴走を止めつつ、決して対立せず補佐に徹する。妬みや裏切りを一切念頭に置かない純粋さが、戦国という猜疑心の塊のような時代でこそ輝く。藤吉郎のハイパー陽キャぶりを引き立てつつ、自分も夢を共有するエネルギッシュな弟像が仲野の演技で生き生きと描かれている。
一方、兄の藤吉郎(後の豊臣秀吉)を演じる池松壮亮は、まさにハマり役だ。従来の秀吉像を覆すような、愛嬌がありながら底知れぬ怖さを持つ。野心家でトリッキーな行動を取るが、計算とハッタリのバランスが絶妙で、草履を懐で温める逸話や、墨俣築城での大胆な決断など、軽快さと狂気を同時に表現する池松の演技は毎回予測不能でワクワクする。
藤吉郎の魅力は、何より「人を信じる力」の異常さにある。農民から這い上がる過程で、信長のご機嫌取りや家臣のまとめ役を弟に任せきりにできるのは、弟を完全に信頼しているから。困ったときの口癖「小一郎申してみよ!」が象徴的だ。父の仇討ちの場面でも、弟の制止で冷静さを取り戻す柔軟さ。出世欲が強くても、家族や仲間を飢えさせたくない純粋な動機が根底にある。
池松が演じる藤吉郎は、破天荒でおちゃらけているのに、どこか脆さや人間臭さを感じさせる。弟と並んだときの目線だけの演技でさえ、武者震いするような絆が伝わってくる。


