■助けた子猫に命を狙われる『汗かき鉄砲』

 最後は、純粋な優しさが最悪の形で利用される、理不尽極まりないエピソード『汗かき鉄砲』だ。

 ある寒い冬の日、腕利きの猟師・栄造は家の外で震えて鳴く痩せこけた子猫を見つけ、可哀そうに思って家の中へ入れてやる。子猫は栄造の鉄砲の弾にじゃれついて遊んでいたが、栄造の母親は猫の様子がおかしいことに気づく。そして栄造に対し、“明日の猟には、必ず当たるが使ったら猟師を辞めなければならない”という禁断の弾を持っていくよう忠告するのであった。

 翌日、栄造が山に入ると、巨大な化け猫が現れた。それは昨日、栄造が優しく助けてやったあの子猫の真の姿であった。化け猫は栄造の弾の数を正確に数えており、彼が弾切れになった瞬間を狙って、恩を仇で返すように容赦なく襲いかかる。栄造は最後の隠し弾を放つことで九死に一生を得るが、言い伝え通り、猟師を辞めることになった。

 弱っている生き物を助けるという善意の行動が、実は自らの命を奪うための冷酷な罠だったという、この恐ろしいエピソード。相手の純粋な善意に付け込み、弾の数を数える化け猫の狡猾さと恐ろしさが光る話である。

 ちなみに「汗かき鉄砲」という題名は、毎年化け猫を撃った12月20日になると、恐怖のためか鉄砲がびっしょりと汗をかくという後日談に由来するそうだ。

 

 『まんが日本昔ばなし』の奥深さは、決して「めでたしめでたし」のハッピーエンドばかりを描かない点にある。

 今回紹介したように、長年愛したペットが突然命を狙ってきたり、助けたはずの人間に裏切られたりする展開は、子どもにとっては少し刺激が強すぎるかもしれない。しかし、そうした物語は人間の持つ“業の深さ”や、自然界の“容赦のなさ”を教えるための大切なメッセージでもあるのだ。

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