■始祖が振るう絶対的暴力…鬼舞辻無惨「黒血枳棘」

 最後に最高の血鬼術として挙げたいのが、鬼の始祖・無惨が振るう「黒血枳棘(こっけつききょく)」だ。

 自身の血管から出した血液を茨状に変化させて放つこの攻撃は、産屋敷邸爆破直後、岩柱・悲鳴嶼行冥に向けて放たれた。ほかの鬼たちの技巧を凝らした血鬼術と比較すると驚くほどシンプルであり、作中では悲鳴嶼が「岩の呼吸 参ノ型 岩軀の膚((がんくのはだえ))」で完璧に捌ききったため、無惨が使う割には、ともすれば地味な技に見えるかもしれない。

 だが、あえてこれを最高の一つに推す理由は、この術の真の恐ろしさが“無惨の血そのものの性質”にあるからだ。上弦の陸・妓夫太郎の「血鎌」のように、鬼の血はそれ自体が毒であるが、無惨のそれは次元が違う。わずかに注がれるだけで人間を鬼へと変貌させ、過剰に摂取させれば肉体は細胞レベルで崩壊する。すなわち「血に触れた時点で勝負が決する」ほどの猛毒を、広範囲かつ超高速でばら撒くことこそが、この術の真価と言える。

 技巧を極めた鬼たちを従えながら、自らは小細工を用いず、ただ圧倒的な暴力で蹂躙する。その絶対的な力の象徴こそが、「黒血枳棘」という血鬼術の恐ろしさを際立たせているのだ。

 結果的に「黒血枳棘」は、これを捌ききった悲鳴嶼の凄さが際立つものとなった。しかし、実は見た目以上にギリギリの攻防を演じていたのかもしれない。

 

 今回取り上げた3つの血鬼術は三者三様でありながら、いずれも「戦いの前提そのものを崩す」強力な力を持っていた。

 この圧倒的な理不尽に対し、鬼殺隊は常にギリギリの均衡で抗い続けてきた。異能がもたらす絶望と、それに抗う人間の執念。その激しいせめぎ合いこそが、『鬼滅の刃』という物語の核心を際立たせているのではないだろうか。

 作中には、この他にも多くの血鬼術が登場する。もちろん「無限城編」にも強力な術が次々と現れ、さらなる脅威が待ち受けている。あなたが思う最高の血鬼術はどれだろうか。これについて思いを巡らせてみるのも、本作の楽しみ方の1つであろう。

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