■新劇場版ではカットされた各キャラのもうひとつの表情
続いて、新劇場版ではカットされたものの、ほっこりする展開の多かった第九話「瞬間、心、重ねて」を振り返りたい。これは二号機が一刀両断した第七使徒が2体に分かれたことで、使徒を倒すために2点同時の荷重攻撃を行うエピソードだ。
シンジとアスカのコンビネーションを完璧にするべく、2人はミサトの元で一緒に暮らし、ユニゾンの特訓をする。珍しくコメディ要素の多い回だった。特訓内容は6日間で曲に合わせた攻撃パターンを覚え込むというもので、シンジとアスカはおそろいの衣装に身を包んで、息ぴったりに毎日を過ごす様子がコミカルに描かれた。
使徒との戦闘において62秒でケリをつけるという作戦では、常に右下にタイマーが表示されるワクワク感も楽しめた。
ストーリー全体が明るいのはもちろんのこと、小ネタ的に楽しかったのが、分離した使徒に一度倒された初号機が駿河湾に頭から突っ込み、『犬神家の一族』のスケキヨばりに逆さまに突き刺さって足だけが出たシュールすぎる場面だ。それを見た赤木リツコは、静かに「無様ね」とツッコんでいた。
また、突然訳のわからない環境に放り込まれたシンジにとって、本来ならば唯一の支えとなるべき肉親にもかかわらず、最も厳しく、何を考えているかわからなかったのがシンジの父親・碇ゲンドウである。テレビシリーズの『エヴァ』には、そのゲンドウの唯一といってもいいお茶目なシーンがある。
第拾壱話「静止した闇の中で」は、第3新東京市が何者かによって停電してしまい皆が困るエピソードだ。
ネルフの職員たちが停電による暑さにやられる中、リツコとともにうちわで涼をとる伊吹マヤは「さすがは司令と副司令。この暑さにも動じませんね」といってゲンドウと冬月を見やる。
この時リツコたちからは見えないが、2人は水の入った防火用水バケツに足を入れてこっそり涼んでいたのだ。真剣な顔で「ぬるいな」「ああ」と会話をする2人のギャグシーンは貴重だった。
最終話付近のインパクトが強いこともあってか、あまり語られることのないテレビシリーズ『エヴァ』のコメディシーン。今一度イチから見直してみたら、新たな発見があるかもしれない。


