「映像化不可能」のトリックを見事に“再現”、「綾辻行人原作」実写化ミステリ作品の魅力 Hulu『時計館の殺人』『十角館の殺人』に『Another』も…の画像
Huluオリジナル『時計館の殺人』 (C)綾辻行人/講談社 (C)HJホールディングス・NTV

 「館シリーズ」といえば、ミステリ界で絶大な人気を誇る重鎮・綾辻行人さんの人気シリーズだ。

 2024年にはシリーズ第1作『十角館の殺人』が映像化。さらに2026年には最高傑作とも評される『時計館の殺人』の実写化作品が公開され、現在、動画配信サービス「Hulu」にて第1部・第2部が配信されている。

 怪しげな館、不可能犯罪、そして読者の認識を根底から覆すどんでん返し……。その唯一無二の世界観やストーリーは映像化不可能とまでいわれ、多くのミステリファンを唸らせてきた。今回はそんな綾辻さんのミステリ小説の中から、映像化された作品を振り返っていこう。

※本記事には各作品の内容を含みます

■「衝撃の一行」を実写化!?『十角館の殺人』

 『十角館の殺人』は1987年に刊行されたミステリ小説であり、綾辻さんの衝撃的なデビュー作である。現在まで続く人気シリーズ「館シリーズ」の第1作でありながら、圧巻のクオリティを誇り、多くの読者に愛され続けている作品だ。累計発行部数は152万部を突破し、この1作で綾辻さんはミステリ界のトップにまで駆け上がった。

 物語は、絶海の孤島に建つ奇妙な館「十角館」で繰り広げられる。そこに集まった大学のミステリ研究会の男女が次々と殺されていくという、王道にしてスリリングなシチュエーションだ。謎の建築家、怪しげな館、過去の不審死、連続殺人……と、古き良きミステリの要素がすべて詰まっているといってもいい。

 そして何よりも特筆すべきが、終盤のどんでん返しである。原作では「ある一行」によって、それまでのすべての認識が覆される。「衝撃の一行」という言葉が、いまや本作を象徴するフレーズとなっているほどだ。

 そのトリックの性質上、本作は長年「映像化不可能」と言われ続けていた。しかし、2024年に「Hulu」が独占配信ドラマとして制作。原作の世界観や雰囲気を巧みに再現したのはもちろん、映像ならではの演出で驚愕の展開を実現した。

 原作小説を読んでいない人はもちろん、原作ファンをも唸らせるクオリティを誇る本作は、ミステリ好きにはぜひともチェックしてほしい1作だ。若手俳優・奥智哉さんと実力派俳優・青木崇高さんが演じる名コンビの掛け合いからも目が離せない。

■ホラー要素も融合した『Another』

 2009年に刊行された『Another』は、ミステリという枠には収まらず、ホラー要素も融合させているのが特徴だ。怪奇的な雰囲気に一気に引き込まれ、「館シリーズ」を彷彿させるどんでん返しも見どころである。

 物語の舞台は1998年。夜見山北中学校に転入した榊原恒一は、同じクラスの美少女・見崎鳴に惹かれる。しかし、ほかのクラスメイトや教師は、鳴を“いないもの”として扱う。というよりは、なぜか本当に見えていないかのように振る舞っている。そして、学園内で次々と巻き起こる不可解な殺人……。
 
 最初はホラーのように不気味だが、次第に論理的な推理が繰り広げられ、ミステリとしての魅力が前面に出てくる作品だ。

 本作は多くのメディアミックスが行われてきた。2010年にはコミカライズ、2012年1月にはアニメ化され、若い世代にも広く知られるようになった。この2作は、「原作のどんでん返しをどう描くのか」という最大の壁を様々なアイデアによって乗り越え、「原作の衝撃」を見事再現してみせた。

 そして、アニメに続く形で2012年8月に実写映画が公開。主要キャストには山﨑賢人さんと橋本愛さんがキャスティングされ、原作の世界観を踏襲しながらも、設定やストーリーの流れを変更。「ホラー」感が強い作品で、新たな解釈の『Another』となった。

 本作で特筆すべきは、橋本さん演じる鳴の存在感だ。人形のような美しさの中に不気味さも感じさせる鳴を見事に演じ、画面の中で異彩を放っていた。どこか人間離れしたミステリアスな雰囲気は、まさに原作の鳴そのまま。ホラー要素が強い映画版の世界観にもよく合っていた。

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