少女漫画の醍醐味といえば、なんといってもヒロインと魅力的なヒーローが織りなす、胸キュンの恋愛模様だろう。しかし、主人公と結ばれる本命の陰で、読者の心をつかんで離さないのが「当て馬男子」と呼ばれる存在である。
彼らはヒロインを巡って本命のヒーローと対立するものの、最後は潔く身を引くという切ない役回りが多い。しかし、大人になってから作品を読み返すと、「実は当て馬男子のほうがハイスペックで優良物件だったのでは?」と思えるキャラクターも少なくないのだ。
今回は、ヒロインとは結ばれなかったものの、その後幸せな結末を迎えた名作の当て馬男子たちを紹介したい。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■身分を捨てて選んだ夢と本当のパートナー『花より男子』天草清之介
『花より男子』は、神尾葉子氏により『マーガレット』(集英社)にて1992年から2003年まで連載された大ヒット作だ。超富裕層の子弟が通う英徳学園を舞台に、一般庶民の牧野つくしが学園を牛耳る「F4」のリーダー・道明寺司らと対立しながらも、持ち前の雑草魂でたくましく生きる姿を描いた痛快な学園ラブコメディである。
この物語に登場する天草清之介(通称:金さん)は、当て馬男子の中でも屈指のスペックの高さと男気の持ち主だ。
彼はつくしが危ないアルバイトでヌード写真を撮られそうになったところを、颯爽と救い出した恩人だ。当初は貧乏な出前持ちの青年と思われていたが、実は父親が代議士、祖父は総理大臣という超大物政治家一家の長男である。
しかし清之介は権力を振りかざす家柄を嫌い、一般人として生きるために家を出ていた。政財界の大物が集うパーティーにひょんなことから出席したつくしに対し、清之介は大勢の招待客の前で堂々と愛を告白する。その潔さと情熱は、つくしの本命である司にも引けを取らないだろう。
それでもつくしは清之介を選ばなかった。さらに清之介には親同士が決めた婚約者・栗巻あや乃がいた。あや乃は清之介を本気で愛しており、彼を追ってアメリカから家出をしてくるほど一途な女性だった。
物語の終盤、コミックス35巻において清之介は久しぶりにつくしの前に登場する。そこでは寿司職人として前向きに頑張る姿が描かれており、その隣には婚約者であるあや乃が明るく彼をサポートしていた。
清之介はつくしに選ばれなかったものの、家柄や権力に頼らず自分の道を切り拓き、自分を心から愛してくれる美しいパートナーを得ていた。大人になってから彼の物語を振り返ると、これ以上ないほど充実した幸せを手に入れたキャラといえるだろう。
■ヒロインの前でイチャつくほどの恋を手に入れた『ママレード・ボーイ』須王銀太
『ママレード・ボーイ』は、吉住渉氏が『りぼん』(集英社)で連載した90年代を代表する大人気少女漫画である。
物語は両親同士が旅行先で出会った夫婦とパートナーを交換し、その家族全員で同居するという衝撃的な展開から始まる。主人公の女子高生・小石川光希と、同居することになった松浦遊の恋模様を描いた作品だ。
この作品における最大の当て馬男子が、光希の中学時代からの同級生である須王銀太だ。テニス部に所属する熱血漢で、かつては光希が想いを寄せていた相手でもあった。銀太は過去のすれ違いから一度は光希を振るかたちになってしまったが、遊という強力なライバルが現れたことで自身の想いをあらためて自覚し、猛アプローチを仕掛ける。
遊のミステリアスな魅力とは対照的な、銀太のストレートな男らしさに惹かれ、「銀太派」として彼を応援した読者も少なくないだろう。
しかし、光希の心は次第に遊へと傾き、銀太の恋は実を結ばなかった。失恋に傷ついた銀太だが、その後は遊の元恋人である鈴木亜梨実と急接近。最初は互いに当てつけのような関係であったが、やがてそれぞれの魅力に気づき、本物の恋人同士へと発展していくのである。
銀太は初恋こそ破れはしたが、最終的には自分を真っ直ぐに見てくれるパートナーを見つけ、幸せな結末を迎えた。
コミックス最終巻では、すれ違いから遊と別れて傷心中の光希を前に、亜梨実と仲むつまじく談笑する様子が描かれていた。さらには、ベンチに座る亜梨実をぐいっと抱き寄せ「ずっと…一緒にいような」と、彼らしいストレートな愛の言葉を伝えている。
傷心の光希とは対照的に、最愛の人と最高の時間を過ごしている銀太の姿は印象的だった。ヒロインに執着しすぎず新しい恋へと踏み出した彼の決断は、非常に健全で清々しいものだった。


