■少女ファンだけでなく男性もとりこにした「理想的なアイドル像」と「秘密の共有」
それまでの“魔女っ子アニメ”といえば「女の子のための夢物語」。しかし、『クリィミーマミ』は男性視聴者をも魅了した魔法少女モノでした。
そこに大きく貢献したのは、やはり高田さんが生み出した「16歳のマミ」のキャラクターとしての魅力であり、「人気アイドル」という作品設定にあったように思います。
小学生の優が、魔法の力で「少女と大人の境目=マミ」に変身するというシチュエーションは女子だけでなく、当時の男性視聴者にも刺さりました。
放送当時はアイドル全盛の時代で、松本伊代さんや小泉今日子さんなどが16歳でデビュー。そんな輝かしいアイドルたちが連日テレビをにぎわせる中で、16歳のアイドル・マミも男性ファンを魅了していったのです。
さらに、『マミ』がそれまでの魔法少女モノと比べて画期的だったのは、魔法を「事件解決」の手段ではなく、アイドル歌手という「職業」を続けるために用いた点です。
また、華やかなアイドルのステージの裏側にある、芸能事務所のドタバタ劇や過密スケジュールといった「芸能界の現実」を描く展開は、子ども向けのアニメとは思えないリアリティを感じました。
そして、実際にアニメと現実をつなぐ架け橋となったのが、「メディアミックス」的な大胆な試みです。当時15歳の新人アイドルだった太田貴子さんを主人公の声に起用し、『マミ』の主題歌『デリケートに好きして』は実際に太田さんのデビュー曲となります。
アニメのアイドル・マミと、現実世界のアイドル・太田貴子さんの存在がシンクロし、当時のファンとしては「マミはどこかに実在しているのでは?」と錯覚するような展開に驚かされました。
太田さんのハスキーな声によるマミ独特の話し方は特徴的で、女性である筆者にも色っぽくチャーミングに聞こえました。また劇中では主題歌だけでなく、多彩な挿入歌も魅力いっぱいで、ライブの演出も見ごたえがあります。
多くのファンは、優の幼なじみである大伴俊夫に嫉妬しながら、「マミの正体」という秘密を共有することで彼女に惹かれていったのです。
今でこそアイドルアニメにおける2次元と3次元の融合は当たり前になりましたが、昭和に放送された『クリィミーマミ』は、その先駆けともいえる画期的なアニメといえました。
■伝説の最終回がもたらした、得も言われぬ「喪失感」
そして『クリィミーマミ』を語るうえで、もはや伝説となった最終回の話題は外せません。物語は、1年という魔法が使える期限が迫る中、最終回(第52話「ファイナル・ステージ」)に突入します。
雨の中でコンサートが開催され、歌唱中に魔法の力が尽き、マミの姿が透けていきます。消えゆくマミ、そして別れを意味する俊夫の記憶が戻る瞬間が訪れます……。
刻一刻とタイムリミットが迫る中での圧巻のステージの演出は、子ども向けアニメの枠を超えた緊迫感に包まれていました。
だからこそ、マミの変身が解けたあとの深い喪失感と、最後のステージをやり遂げた達成感が、視聴者に大きな感動をもたらしたのです。
思い返すと『クリィミーマミ』の放送当時、まだ子どもだった自分にとって、マミは初めて身近に感じた「本物のアイドル」でした。あの時感じた胸の高鳴りや魔法が解けてしまう切なさは、大人になった今も忘れられない大切な思い出です。その完成されたアイドルの存在は、放送から40年以上が経った今も心の中で輝き続けているのです。


