少女の心を壊し、井戸に毒を入れ…『鬼滅の刃』実は鬼たちよりも「鬼」だった人間たちのひどい行為の画像
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』第3弾キービジュアル (c)吾峠呼世晴/集英社 (c)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 2025年7月18日に公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』。公開から234日間で興行収入397.9億円を突破し、歴代1位の『無限列車編』(407.5億円)に次ぐ国内歴代2位という歴史的快挙を成し遂げた。(3月9日時点)日本中の注目が集まるなか、改めて本作が描く「闇」の深さに注目したい。

 鬼の始祖・鬼舞辻無惨によって生み出された人喰い鬼と、それに対抗する人間たちの戦いを描いた『鬼滅の刃』(作・吾峠呼世晴氏)。作中では鬼の強大な力や残忍さが描かれ、読者の心を痛める描写も多い。だがその一方で、実は人間の中にも目を覆いたくなるような行動に及んだ者たちも存在した。

 時には鬼以上に残酷なその行いは、結果として新たな鬼を生み出す引き金となったことさえある。そこで今回は、作中で描かれた「鬼よりも非道な人間たちの行動」を振り返っていこう。

 

※本記事には作品の内容を含みます

 

■幼い栗花落カナヲの心を壊した大人たち

 蟲柱・胡蝶しのぶの継子である栗花落カナヲは、主人公・竈門炭治郎と同期の鬼殺隊士である。自分の気持ちをうまく口に出すことができず、いつも静かに微笑むミステリアスな雰囲気の少女だが、彼女が感情を失ってしまった背景には過去の悲しい出来事が関係していた。

 貧しい家に生まれたカナヲは、両親からひどい虐待を受けて育った。当初は痛みや空腹に苦しんでいたカナヲだが、そんな日々が続いたある日、彼女の心に決定的な変化が訪れる。作中では「ぷつんと音がして 何もつらくなくなった」と語られている。

 本来であれば親に守られるべき幼少期に暴力を受け続けた結果、心を閉ざしてしまったカナヲ。最終的に、両親によって人買いに売り飛ばされてしまう。

 その頃の彼女の瞳には光はなく、まるで生きる気力のない人形のように人買いに連れられており、さらに“ノミだらけで汚いから”という理由で縄に繋がれ、粗雑な扱いを受けていた。そんな中、偶然カナヲを見かけた胡蝶姉妹に救われ、彼女ははじめて人間らしい生活を手に入れることができたのである。

 幼い子どもが心を壊すほどの苦痛は、想像を絶するものであっただろう。胡蝶姉妹の優しさに触れてもなお、カナヲがすぐに心を取り戻すことはなかった。感情を失い、生気のない表情を浮かべる彼女の姿は、あまりにも痛々しかった。その後、カナヲが心優しい炭治郎に出会えたことに救いを感じたのは、筆者だけではないだろう。

■生きたまま堕姫(梅)を焼いた侍と女将

 鬼の中にには、人間だった頃に過酷な扱いを受けた者も少なくない。「遊郭編」で最大の敵として立ちはだかる上弦の陸「堕姫・妓夫太郎」もまた、その1人だ。

 遊郭の最下層で生まれた妓夫太郎は生まれてくるまでに何度も殺されそうになり、生まれてからも凄惨な暴力を受けて育った。虫やネズミを食べて飢えをしのぎ、周囲に疎まれながらなんとか生き延びていた彼に、ある日妹が生まれる。

 母親が患っていた病名にちなんで「梅」と名付けられたその妹、後の堕姫は類いまれな美少女であった。容姿がすべてを左右する遊郭において、大人さえも心奪われるほどの美貌を持つ梅は、妓夫太郎の唯一の自慢となった。過酷な生活の中でも2人はようやく生きる道を見つけたかに思えたが、その平穏は長くは続かなかった。

 梅が13歳の頃、客として訪れた侍の目をかんざしで突き、失明させるという事件を起こしてしまう。その報復に、梅は縛り上げられた末に生きたまま焼かれるという仕打ちを受けるのだ。

 実はこれは、妓夫太郎を疎ましく思っていた楼主の女将と侍が共謀した上での蛮行だった。兄妹はこれによって致命傷を負い、死にかけていたところを、当時上弦の陸だった童磨に救われ、鬼となる。

 本編では詳細が語られていないが、公式ファンブックによると梅が侍を手にかけた理由は、侍が妓夫太郎を侮辱したためであったと明かされている。作中、妓夫太郎は“自分の育て方が悪かった”と悔やんでいたが、実際には兄を思う梅の兄妹愛ゆえの行動だったのだ。

 必死に生きてきた妓夫太郎と梅にとって、生きたまま焼かれるという結末はあまりにも救いがない。まだ13歳の少女を縛り上げて焼くことができる侍の行為、そしてそれを画策した女将の冷酷さは、まさしく鬼の所業といえるだろう。

 鬼となった妓夫太郎と堕姫(梅)がしたことは決して許されるものではない。だが、彼らが人間であった頃は、ただ必死で生きようとしていただけだったのもまた事実である。そんな悲惨な過去を知ると、彼らの境遇に思わず同情してしまう。

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