■錬金術が紡ぐ信念の絆『仮面ライダーガッチャード』九堂風雅とりんね

 最後は、錬金術をテーマにした『仮面ライダーガッチャード』(2023年〜2024年)から。

 本作で、シリーズ初となる「テレビシリーズで2号ライダーに変身する女性」という大役を担ったのが、仮面ライダーマジェードこと九堂りんねである。彼女が錬金術師として覚醒するうえで大きな鍵を握っていたのが、父・九堂風雅の存在だった。

 第1話から冥黒の三姉妹に命を狙われ、主人公・一ノ瀬宝太郎にガッチャードライバーを託すなど、物語の核を担う“イケおじ”として登場した風雅。10年前、ケミーを盗み出し組織を裏切ったという汚名を背負いながらも、彼は世界を守るため孤独な戦いを続けていた。さらに物語中盤からは、風雅自身も「仮面ライダーウインド」に変身し戦い、りんねを導く大きな光となったのである。

 そんな父の姿が強烈に印象付けられたのが、第48話だ。冥黒の王・ガエリヤが仕掛けた、1つの拳銃に1発の弾丸を込めてどちらかが死ぬまで続くという非情なデスゲーム。風雅は娘・りんねを、そしてグリオンは自らが創り出したアトロポスを救うため、くしくも2人の「父親」が、互いの命を賭けてこの残酷な決闘に臨むことになった。

 この決闘は、宝太郎(仮面ライダーガッチャード)の機転によって回避されたが、ここで浮かび上がったのは、決定的な2人の対比である。この直後、アトロポスを自身の理想を実現させるための道具として使った創造主・グリオン。対して風雅は、救い出した娘を強く抱きしめ、その後も襲いかかってきたグリオンから身を挺して守るのだった。

 その姿は、娘の未来を守るために戦い続けてきた父としての覚悟を、何より雄弁に物語っていたのである。

 

 こうして振り返ると、『仮面ライダー』シリーズにおける父親ライダーたちは、単なるサブキャラクターにとどまらない重要な存在であることがよく分かる。

 時を超えて息子を励まし、種族の違いを超えて信念を託し、あるいは命を懸けて次の世代を守ろうとする。その姿は、若き主人公たちが進むべき道を照らす“もう一人のヒーロー”でもあった。

 父から子へ受け継がれる想いと力。それこそが、『仮面ライダー』という物語をより深く、そして世代を超えて愛されるシリーズへと押し上げてきた、大きな魅力のひとつなのかもしれない。

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