■スパーリングなのが惜しい…幻の名勝負! 幕之内一歩VS間柴了
最後は、コミックス第140巻で描かれた「幕之内一歩VS間柴了」を見てみよう。「引退した一歩がどうして試合を?」と思う人もいるかもしれないが、この試合は公式戦ではなくスパーリングだ。しかし、その内容はベストバウトと呼びたくなるほど面白いものであった。
世界戦を間近に控える間柴の役に立ちたいと考えた一歩は、対戦相手が現役時代の自分によく似たインファイターであることを知る。鷹村の助言もあり、自分がスパーリングパートナーになることを決意した一歩だったが、その対戦相手は左利き(サウスポー)であるという問題があった。それでも間柴を手伝いたい一心で、一歩は現役時代さながらの猛練習を積み重ね、サウスポースタイルを習得。そして、間柴にスパーリングを申し出る。
この非常識な申し出に最初は間柴も難色を示すが、完璧なサウスポースタイルで迫る一歩を見て考えをあらため、スパーリングが開始される。得意の“フリッカー”で遠い距離からパンチを繰り出す間柴、それをかいくぐりインファイトに持ち込む一歩。両者の攻防は世界戦さながらの名勝負となった。2人も次第にヒートアップし、「とっととくたばれっ」「強いなあ もうっ」と、拳だけでなく口での応酬が飛び交うのも見どころだ。
気になる結果だが、先に根を上げたのが一歩だったので、一応は間柴の勝ちになるだろう。しかし、これはあくまでスパーリングだ。せっかくなら、この両者の激突はもっと大きな舞台で見たかった。いちファンとしてそう思うのは、ぜいたくな感想だろうか。
物語論において、「主人公が戦わない試合は面白い」という考え方がある。主役ではないキャラクターの試合は結果が読めず、だからこそハラハラドキドキして楽しめるのが理由だ。その考え方に当てはめると、一歩が引退した後の『はじめの一歩』に多くのベストバウトが生まれたのは必然かもしれない。
一歩の現役復帰説も根強くささやかれる中、今後の『はじめの一歩』では、どのような名試合が描かれるのだろうか。ファンの期待は尽きることがない。


