千堂VSゴンザレス、リカルドVSウォーリーも…『はじめの一歩』一歩引退後に描かれた「白熱のベストバウト」の画像
少年マガジンKC『はじめの一歩』第141巻(講談社)

 森川ジョージ氏による人気ボクシング漫画『はじめの一歩』の主人公・幕之内一歩が、プロボクサーを引退してから8年が過ぎた。第1208話「木の葉」で描かれた引退宣言の衝撃は今なおファンの心に刻まれており、一歩自身は鴨川ジムのトレーナーとして新しい道を歩み続けている。

 引退した一歩が公式試合に出ることはなくなったが、現役時代に彼としのぎを削ったライバルたちは新たな舞台で熱い試合を繰り広げている。その中には、かつての「幕之内一歩VS千堂武士」、「鷹村守VSブライアン・ホーク」といった伝説的な試合に並ぶベストバウトと称えられる名試合が生まれているのも事実だ。

 そこで今回は、一歩の引退後に描かれた白熱のベストバウトを3つ厳選して紹介したい。主人公がリングから去った後、ライバルたちが挑んだ試合の数々をご覧いただこう。

 

※本記事には作品の内容を含みます。

 

■一歩の最高のライバルと一歩を倒した男の「どつき合い」 千堂武士VSアルフレド・ゴンザレス

 まずは、コミックス128巻から描かれた「千堂武士VSアルフレド・ゴンザレス」戦だ。千堂といえば、『はじめの一歩』ファンには説明不要の一歩のライバルであり、彼と一歩が激突した日本フェザー級タイトルマッチは今でも語り草となっている。

 対するゴンザレスは、一歩が世界挑戦の際に対戦したWBA世界フェザー級2位の実力者である。「死神(ミキストリ)」の異名を持ち、高い技術力と攻撃力を兼ね備えたボクシングで一歩を返り討ちにしてみせた。いわばこの試合は、一歩の最高のライバルと、その一歩を倒した男の激突だったのである。

 千堂が「幕之内一歩を倒した男と最高の勝負がしたい」と熱望して実現した本試合は、序盤から激しいパンチの応酬となった。ボクシングよりも「喧嘩」に近いスタイルを得意とする両者は噛み合い、息を呑むような乱打戦が展開される。その迫力に観客たちも興奮し、会場はかつて一歩と千堂が死闘を演じた「ララパルーザ」さながらの熱気に包まれていく。

 決着は第4ラウンドだった。一撃必殺の千堂の右拳が迫る中、ゴンザレスは勇気を振り絞り、かつて一歩を仕留めた右カウンターを放つ。だが、千堂はこれに耐え、左のサンデーパンチ“スマッシュ”を返す。顎を貫かれ、体が浮き上がるほどの衝撃を受けたゴンザレスは立ち上がれない。千堂は見事に試合を、いや、最高の「どつきあい」を制したのである。

 試合終了後、ゴンザレスは「満足だ」と晴れ晴れした表情を見せ、千堂もゴンザレスを「遠い国で親友(マブダチ)ができた」と評している。相手を壊しかねないほどの激闘の末に芽生えた友情と爽やかさも、この試合の素晴らしさだ。

■絶対王者を期待させた野生児の躍動! リカルド・マルチネスVSウォーリー

 『はじめの一歩』の世界のフェザー級には、絶対王者と呼ばれるリカルド・マルチネスが君臨している。判明しているだけで68戦無敗を誇る生ける伝説であり、伊達英二を含む多くの挑戦者を返り討ちにしてきた。そんなリカルドを極限まで追い詰めることとなるのが、コミックス第136巻から描かれる「リカルド・マルチネスVSウォーリー」戦だ。

 挑戦者のウォーリーといえば、かつて一歩と対決し、鴨川源二会長をして「次は絶対に勝てない」と言わしめた天才ボクサーだ。当時わずか4戦のキャリアしかなかったにもかかわらず、リングを縦横無尽に移動する超人的な運動能力で一歩を翻弄した勇姿は印象深い。そのウォーリーが25戦のキャリアを積んでリカルドに挑んだ本試合は、終始波乱に満ちたものとなった。

 ウォーリーは得意のフットワークで予測不可能な動きを見せ、さらにリカルドの目を真っ先に潰そうとする作戦に出る。ウォーリーの奇想天外なボクシングにリカルドもしばらくは対応に苦慮するが、長年研ぎ澄ませてきた基本技術を忠実に実行し、徐々に対応していく。いつものように自分の圧勝で終わらない展開に、リカルド自身が「何より私が 期待している!」と闘争心を燃やし、試合にのめり込んでいく姿が印象的だ。

 最後はボクシングの“基本”が野生児を捉え、3度のダウンを奪ったリカルドが第6ラウンドKOで勝利をおさめた。試合後、リカルドは「あの瞬間同じ場所に立っていた」とウォーリーを心から称賛し、負けたウォーリーもボクシングを純粋に楽しめたことを素直に喜んだ。

 結果だけ見れば絶対王者の圧勝だが、本人たちの意識はまったく異なる試合だったといえよう。

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