ドラマ『相棒』杉下右京・最恐の宿敵「南井十」とは何者なのか 謎多き「物語のキーパーソン」のこれまでの画像
ドラマ『相棒 season24』メインビジュアル (C)テレビ朝日

 『相棒 season24』(テレビ朝日系)が佳境を迎える中、ある男の存在が再び話題になっている。それが、主人公・杉下右京を挑発するように殺人犯を作り出す南井十(みない つなし)だ。彼は人間心理のプロフェッショナルであり、ロンドン研修時代の右京の良き“相棒”だった男でもある。

 今回は、いまや右京の宿敵となった南井について、これまでの登場エピソードを振り返りながらその人物像に迫ってみたい。

※本記事には作品の内容を含みます 

■右京のかつての相棒にして狡猾な犯罪者(season16第7話「倫敦からの客人」)

 このエピソードでは、元スコットランドヤードの刑事である南井が右京のもとにやってくる。人当たりがよく物腰も柔らかい彼は、一見すると鋭い観察眼を持つ好々爺といった雰囲気である。 

 3年前、停職中の右京がロンドンに渡った際には、南井とともに「逆五芒星事件」という難事件を解決しており、南井は右京の推理力を絶賛していた。右京もまた、彼の卓越したプロファイリング能力を高く評価し、深い信頼を寄せていたのである。

 しかし、ダークウェブを利用したある殺人事件をきっかけに、南井の本性が暴かれていく。特命係の活躍により事件そのものは解決するが、犯人は青酸カプセルで自殺。その裏に、犯人を巧みに誘導した「犯罪コンサルタント」の存在があったことに右京は気付く。

 そしてその正体こそ、南井だった。彼は“反省しない犯罪者は、自らの死で罪をつぐなわせるべき”という行きすぎた正義感を持ち、犯罪を教唆したうえに最後は自殺を促すという凶悪な手口を使っていた。

 しかし、証拠は一切なく、南井は右京の追及を余裕の表情でかわし、ロンドンへ帰っていく。その不気味ささえ感じさせる姿は、優れた捜査官が同時に優れた犯罪者にもなりえるという事実を突きつけるものであった。

 その後も、南井は国外にいながら日本で犯罪を見事に成立させるという離れ業を見せつける。右京は「あなたを絶対に許さない」と、その追及の手を緩めることはなかった(season17第17話「倫敦からの刺客」)。こうして南井は、右京にとってまさに“宿敵”と呼ぶべき存在になったのである。

■その哀れな最後とは…?(season18第14話・第15話「善悪の彼岸」)

 南井と右京の頭脳戦は、南井が何食わぬ顔で特命係の部屋を訪れるところから、新たな局面を迎える。しかし、この時の南井の姿は、右京と当時の相棒・冠城亘の追及に対し激高するなど、これまでと異なり余裕のなさが目立っていた。

 やがて、かつての「逆五芒星事件」を彷彿させる新たな事件が発生。特命係は捜査の果てに、南井を追い詰めていく。

 右京が南井との直接対決に臨んだ時、南井の様子は明らかにおかしかった。自らの犯罪を認めるような発言をしたかと思えば、次の瞬間には何も覚えていないような態度を見せる。その狼狽した表情は演技ではなく、老化による認知能力の低下によって、現実と虚構の区別さえ曖昧になりつつあったのだ。“物忘れがひどくなった”と語るその目は虚ろで、かつての明晰な姿は見る影もなかった。

 自らが犯罪を誘導し、それを忘れ、犯人を追いかける。それは、かつて右京と捜査をともにした日々を、無意識に再現するためだったのかもしれない。「悪い奴がこっちを見てる」と恐怖に顔を歪ませたかと思えば、「また捜査をやろう、一緒に」と子どものように目を輝かせる。その混乱した様子は、彼がもはや日常生活すらまともに送れない状態であることを示していた。

 変わり果てた元相棒、そして宿敵の姿に、右京は「かける言葉もありません……」と、憐れむように言い放つ。

 物語の最後、身柄を拘束された南井は病院を抜け出し、断崖絶壁で彼の手袋と傘だけが発見されるという結末を迎える。この予期せぬ幕切れに、右京は悲しげな表情を浮かべ、静かに現場を去った。

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